2019年3月27日 (水)

「ローテックス活動について」

3月7日卓話要旨
ローテックス 江原 珠李 さん
(中島 英嗣会員紹介)
 
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 私は2015~16年度、国際ロータリーの青少年交換プログラムでメキシコに派遣していただきました。現在は神田外語大学のスペイン語専攻の2年生です。
 ローテックスとは、ロータリー青少年交換プログラムで1年間留学した学生たちがその後3年間、留学経験を生かして活動する集まりです。主な仕事は、派遣来日学生のサポート、ロータリー行事でのお手伝いなどで、ローテックスが行事を企画運営することもあります。通常はロータリアンが来日学生にカウンセラーとしてつくのですが、年齢がかなり離れているので、学校などでの小さな問題をもっと気軽に話せるように、ローテックスがジュニアカウンセラーとして学生につき、サポートしています。
 私がメキシコに派遣されていた当時は、高校2年生でした。派遣国が発表されたときは、ロータリアンの人から「メキシコは治安が悪いから気を付けてね」と言われて不安だったのですが、私が訪れた地域は治安がそれほど悪くなく、日本と同じように安全に生活できました。それから、メキシコは暑いと思われるかもしれませんが、私が派遣されたプエブラという街は標高が高く、とても涼しい場所でした。雪は降りませんが、日本と同じくらい寒くなるので、暑い国というイメージで荷造りをしていった私は、冬前に何度も風邪をひきました。
 メキシコでは、来校3日目ぐらいで友達ができました。メキシコ人の性格だと思うのですが、みんな陽気で優しく、とても助けてもらったので、学校生活は楽しかったです。授業は全てスペイン語で、分からないときは友達が教えてくれたり、先生も授業後に丁寧に説明してくれたので、楽しくスペイン語を習得できました。ホストファミリーや街の人もとても親切で、私のメキシコに対するイメージはどんどん変わり、いつの間にか私も明るい性格になることができました。
 メキシコではロータリーの活動もしました。メキシコは貧富の差が激しいので、冬に貧しい地域を訪れて毛布や防寒具を配る活動をしました。それから、学校がない地域に小学校を建てるための募金活動をして、その寄付金を渡しに行ったりもしました。こうした活動を通して、私は人の役に立つことがしたいと強く思うようになりました。
 帰国後はローテックスとして活動しています。派遣来日学生のサポートなど、人助けとしては小さなものではありますが、いつかは多くの人の役に立つことにつながる第一歩だと思いながら活動しています。
 ローテックスの活動としては、8月にサマーキャンプを行っています。来日学生が日本に着いてすぐに参加し、派遣生同士で交流したり、日本語や日本文化について学んだりします。また、月2回、茶道の稽古をしており、来日学生の日本語スキル向上につながっています。隔月で行っている「フィールドトリップ」では、日本でしかできないことを来日学生に体験してもらっています。一番のメインイベントは3月のジャパンツアーで、来日学生を連れて日本の名所を回ります。9日間の長旅ですが、帰国後に母国で日本のことをいろいろ教えられるようにすることもテーマの一つです。行き先も全て自分たちで計画するので大変ですが、旅行後に「いい思い出になった」と言われると、これからも活動を頑張っていく励みになります。
 青少年交換プログラムはロータリーの中でも一大イベントだと思っています。私がこうして卓話をしているのも、このプログラムでローテックスになれたからで、普通の学生にはできない経験をたくさんさせていただきました。このプログラムは、「小さな親善大使」というテーマがあるので、派遣先で日本のことを伝え、現地の文化・歴史・社会情勢を理解することを求められています。普通の語学留学とは違うからこそ、いろいろなことを学べるいい機会にもなりますし、それだけ難しいことに挑戦するからこそ大きく成長することができました。ですから、多くの学生にこうした貴重な経験をしてほしいと思っています。そのためにも、私たちローテックスは、このプログラムのことを多くの人に知ってもらう活動を全力で頑張りたいと思います。ジャパンツアーやフィールドトリップができるのもロータリアンの皆さまの支援があってのものです。これからも派遣生が「小さな親善大使」として国内外で活躍できるよう、私たちローテックスも全力でサポートしていくので、ご支援をよろしくお願いします。

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2019年3月15日 (金)

「希望の風、奨学金制度について」

2月28日卓話要旨
2580地区希望の風奨学金支援委員会委員長 百目鬼 健 氏
(玉木 勝会員紹介)
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   「ロータリー希望の風奨学金制度」は、2011年3月11日に発生した東日本大震災の遺児たちに奨学金を給付する制度です。両親または片親を亡くした遺児が高校を卒業後、大学・短大・専門学校で学んでいる期間、毎月5万円を給付し、返済は求めません。中高生はもらうことができず、専門学校生は高校卒業程度の学力があることが条件になっています。留年、休学、退学をすると、給付が打ち切られます。
 この制度がスタートしたのは、震災から8カ月たった2011年11月1日でした。ロータリアンとして、この制度ができた経緯を知っておくことは大切です。マグニチュード9.0という大地震と大津波により、被災範囲も北海道から千葉までと広く、被災地のどこに支援の手を伸ばせばいいのか判断しかねている各クラブに対し、2010~11年度のガバナー会で支援の窓口を一つにするように提案がありました。それに呼応してただちに各地から義援金が集まり、最終的には10億3800万円に上りました。そして、この義援金をどのような形で使えば被災地支援として有効なのかを検討する委員会をガバナー会の中に発足させ、被災地から5名、被災地以外から5名の計10名のガバナーからなる「東日本大震災支援検討委員会」が立ち上がりました。
 まず、集まった義援金の中から見舞金として北海道東部、青森、岩手・宮城、福島、栃木、茨城、千葉の各地区に計1億6800万円をお渡ししました。他にも義援金の使い道をいろいろ検討する中で、被災地・福島のガバナーから「決して大きくはない額を配分してしまうのではなく、将来を担う青少年の教育環境の改善のために一括して使うべきだ」という意見が出て、委員会としては「義援金を分散させずにロータリーらしい青少年の道を探る」という結論を出しました。この決定は、1923年の関東大震災の際に東京ロータリークラブが取った対応に学んでいます。生活用品の提供ではなく、人を育てる環境づくりや次世代を担う子どもたちの救援に義援金が向けられました。このことは、1995年の阪神・淡路大震災、2004年の新潟県中越地震にも受け継がれているそうです。
 しかし、次年度のガバナー会では長期のプログラムはできないと決断し、残りの義援金をいったん各地区に返還することにしました。そこで、そのとき賛同した10地区で「ロータリー東日本大震災青少年支援連絡協議会」を新設して義援金の使途を検討し、奨学金制度を始めたのです。制度開始から丸7年が経過し、現在の支援地区及び支援団体は、当地区を含めて28地区、この中には海外の2地区も含まれます。2019年1月31日現在、133人(延べ人数では368人)の学生に奨学金を給付してきました。
 大震災の直前に生まれた子どもが大学を卒業するのは2033年3月です。少なくともそれまでは、この制度を維持しなければなりません。制度の対象人数は1724人で、必要な金額は合計10億8000万円と試算されており、今年1月時点であと1億7500万円不足しています。まずは皆さん自身がこの制度を知り、新入会員の中にはこの制度のことを知らない人もいるので、例会を通じて啓蒙し、少額でも継続的に支援していただきたいのです。
 青少年支援連絡協議会の方針の一つに、「希望の風奨学生とロータリーとの交流を図ろう」というものがあります。この制度を利用して、明るく生き生きと勉強し成長している若者を直接見ていただくことで、さらに支援につながるとわれわれは考えています。
 ただ、交流を通じてわれわれが知ったことは、奨学生自身にロータリークラブから奨学金をもらっている実感があまりなかったことです。これには驚いています。しかし、考えてみると、本人がこの制度を知って申し込んだ場合を除けば、保護者が手続きをし、保護者を通じて本人にお金が渡る流れになっているので当然です。保護者は感謝していても本人は知らないことが多かったのは、大きな反省点です。ただ、交流を通じてわれわれの制度を知ってもらい、感謝の気持ちを伝えてくれたことは非常にうれしかったです。また、協議会のもう一つの方針として、「奨学生がロータリーの本質に触れて、自らが奉仕活動を実践する大人に成長してほしい」というものがあります。
 このプロジェクトは素晴らしいものであり、次世代を担う青少年の支援になっています。ぜひ2033年まで無事に継続できるよう、不足分の支援をお願いします。

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「コンサートホールの音づくり」

2月14日卓話要旨
(株)竹中工務店 技術研究所 日高 孝之 氏
(児玉 正孝会員紹介)
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   コンサートホールの音響設計では、オペラやコンサートなどの舞台芸術を、作者が意図したように最も美しく響かせる空間をつくることが重要です。なぜなら、作曲家は自分の身の回りにある教会やホールなど特定の空間での響きを想定して、そこで最も美しくなるように曲を作ってきたからです。ですから、コンサートホールを設計する際には、こういう響きのものが欲しいという人の感性に対して、音が伝わるという物理現象をコントロールする必要があります。つまり、人の感覚を物理的な数値で明確にする作業を行い、それを落とし込んで設計図を作っていきます。
 音楽を扱う難しさは、同じ音楽を聞いても人それぞれで異なる主観的な体験をしていることにあります。そのことを脳から考えてみます。脳を三つの層で捉えると、根っこは本能に関わる部分です。潜在意識ともいいます。その上に、情動を抑制する部分と理性をつかさどる部分があります。実は、われわれが音楽を聴いたり踊ったりしているときには、根っこの部分が激しく反応しています。つまり、潜在意識が音楽と非常に関わっており、音楽は人間の本質的な感性なのです。だから、われわれは音楽に感情移入できるのです。
 物理現象としては、人間の鼓膜に入った音が有毛細胞という感覚器官で電気的な信号(パルス)に変換されます。それが伝わって、脳内の神経で再構築され、われわれは音を感覚(クオリア)として感じているのです。しかし、人によって音の再構築のされ方が異なるので、感性や感覚が違ってきます。だから、それをいかに客観化し、設計に取り入れるかというのは最も難しいのです。
 1990年代、日本では本格的な劇場ホールが多く造られました。ただ当時は、世界的にも音楽的に良いホールとはどのようなものか、十分に解明されていませんでした。そこで、われわれは二つのことをしました。
 一つは、世界中の指揮者に手紙を送り、どんなホールが好きかを聞いて、良いホールを探すことでした。もう一つは、コンサートホールのランキングを参考にし、指揮者や音楽評論家にアンケートを取って、その結果を統計的に並べ替えることでした。そして、それをベースに世界66のホールを訪ね、音響を測定しました。実際にインタビューなどもして、良いホール、悪いホールの特徴を見つける調査研究をしたのです。
 良いホールは、音に包み込まれたような立体的な感覚を感じることができます。それに対応する物理量をわれわれは測ってきました。ただし、実際に建築を進めていく上で、数値だけでいいのかというとそうではありません。そこで、仮想のホールをコンピューター空間の中に模擬的に作り、設計段階である程度の音の確認をしています。その次に10分の1の模型を作って、この中で実験をし、音を確認しています。実際に作るのは大変ですが、建築は手直しができないので、設計精度を上げるためにもこのように2段階で設計します。最終的に建物ができた段階で、数値化できないものが当然あるので、耳で確認して手直し工事をしています。
 初台にある東京オペラシティコンサートホールは、世界三大ホールの実測値を設計目標にして造ったのですが、竣工して20年弱がたったときに、イギリス・ガーディアン紙の「世界のコンサートホールベスト10」に選ばれました。また、ホールというのは同じ形をしているのでデザインに差を付けるのは難しいのですが、代々木にあるホールを造ったときは、建築主から「外観を見て私のホールであることが分かるようなデザインにしてほしい」という要望を受けました。形は違えども、数値的には世界的に良いホールを目指して建築を進めた結果、良い評判を頂いています。初台の新国立劇場にあるオペラハウスは、日本初のオペラハウスでした。前例がない中でわれわれは、今度は世界三大オペラハウスの数値目標に沿って造りました。幸せなことに、世界21名の指揮者へのアンケートの結果、このオペラハウスが4番目に選ばれました。
 音楽に対する人の感性には、普遍性があります。
われわれの生理的機構は、変わることはないわけです。
つまり、音楽にとって好ましいホールは、時代を超え
て存在し得るといえます。そこに音響設計をすること
の普遍性も存在すると思っています。これまで話して
きた客観的な設計方法は、それに対する一つのソリュ
ーションではないかと思っています。

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2019年3月 4日 (月)

「ふるさと納税、ホントのところ」

2月7日卓話要旨
(株)トラストバンク 代表取締役 須永 珠代 氏
(新 健一会員紹介)

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   私は2012年から、ふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」を企画運営しており、全国の自治体の約8割に当たる1400を超える自治体と契約しています。これまで地方に直接足を運び、漁師や農家、旅館や牧場の経営者などいろいろな方とお会いして、ふるさと納税の可能性を伝えてきました。今では20万点の返礼品を掲載しています。
 ふるさと納税は、2008年に施行された制度です。私は群馬県伊勢崎市に生まれ、高校卒業までの18年間そこでお世話になったのですが、今は東京で就職し、東京で税金を納めています。しかし、地方が育てた人材が東京に税金を納めているのは不公平です。そこで、一部でいいからふるさとに恩返ししようというのがふるさと納税の趣旨です。「ふるさと」というのは、どの自治体でもいいことになっています。
 ふるさと納税の方法は簡単で、インターネット販売と同じように、申し込むと控除証明書(いわゆる領収書)が自治体から送られてくるので、それを確定申告に出すだけです。少しだけ制約がありますが、ワンストップ特例制度といって、確定申告をしなくていい方法もあります。また、寄附するときに返礼品だけでなく使い道も選べます。普通、税金の使い道は自分で選べませんが、ふるさと納税は間接的ではありますが使い道を選べる唯一の制度なのです。
 ふるさと納税の寄附金額は右肩上がりで伸びていて、1億円以上集める自治体が何と500以上もあります。寄附金は自治体の税収になるだけでなく、地場産業の発展につながっています。しかも、寄附金は寄附者の指定した使い道以外はある程度裁量のある使い方ができるので、未来への投資として使うことができ、首長や職員は本当に感謝していると思います。
 例えば佐賀県太良町のミカン農家は、それまでは他のミカンと同じような流通をしていましたが、ふるさと納税への出品をきっかけに、全国にファンができました。さらには農地を拡大することができ、新たな雇用も生まれました。また、ジュースやゼリーに加工販売することで年収が安定するようになりました。ネット販売も始めたことで、販路拡大にもつながっています。こうしたミカン農家のようなインパクトを生んだ事業所は、全国に1~2万以上あることが想定されます。
 弊社が最も力を入れているのは「ガバメントクラウドファンディング」です。自治体のいろいろな課題を解決する資金を調達するためのものです。文京区の例を挙げると、分かっているだけで区内に子どもの貧困世帯が1000世帯あります。その子どもたちのために、「こども宅食」というものを始めました。食品メーカーからNPOに送られた賞味期限間際の食品などをストックして子どもたちに届ける仕組みなのですが、人件費と設備投資費がかかります。その予算を文京区としては少ししか出せないので、資金を補うためにふるさと納税を活用することになりました。これには返礼品はありませんが、2000万円の目標金額に対し8000万円が集まりました。
 「ふるさとチョイス」には、ふるさと納税を通じて被災地を支援できる仕組みもあり、累計50億円以上の災害支援金が集まりました。
 しかし、自治体はあんなに大判振る舞いして、本当にもうかっているのかという質問をよく受けます。例えば皆さんが1万円を寄附すると、その3割が返礼品代となり、人件費や事務手数料を引いた残りが自治体の税収となります。返礼品の送料だけは地域外に流出しますが、1万円のほとんどは地域内に落ちるので、自治体は税収をきちんと住民に還元することができるのです。
 今、返礼品が高価過ぎることが問題になっています。自治体の税収のために行っているのに、ギフト券などで返礼してしまうと結局は大手企業に使われてしまうので、それではいけないというのが総務省の見解です。総務省が自治体をいじめているような構図になっていますが、実は総務省は制度の趣旨に沿った多くの自治体を救うために致し方なく規制を強化したので、多くの自治体は総務省の決定に感謝しています。
 「ふるさとチョイス」の方針として、地場産業でなければ駄目だということ、共通ポイントやギフト券は扱わないことを掲げています。そして、地元にお金を落とさなければならないので、手数料は平均2~3%だけ頂いています。
 このように、ふるさと納税は民意の反映なので、ぜひ皆さんの意思をふるさとに届けてほしいと思います。

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2019年2月18日 (月)

「裁判員裁判を中心とした刑事裁判の実際」

1月31日卓話要旨
公証人   栗原 正史 氏
(宗宮 英俊会員紹介)
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   私は調理師を9年、裁判官を27年務めた後、今は公証人をしています。裁判官としては、刑事ばかりを扱ってきました。その中で、裁判員裁判を60件以上担当したので、一応ベテランの部類に入っていました。
 裁判には、私が扱っていた刑事裁判の他に、民事裁判、家事審判、少年審判があります。裁判所の種類には、第1審の地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所、第2審の高等裁判所、第3審の最高裁判所という3段構えになっています。裁判官の数は、簡裁判事を含めて3843人ですので、希少な職種です。
 裁判員裁判では、第1審の地裁で扱う刑事事件のうち、死刑や無期懲役など法律で定められた一定の重い罪だけを扱っています。なぜなら、そうした犯罪の方が国民の関心が高く、社会的影響が大きいと考えられるからです。ただ、裁判員に危害が加えられる恐れのあるものや、長い時間がかかるものについては除外することになっています。数でいうと、平成21年に始まって以来、全国で毎年約1000~1700件の裁判員裁判が行われています。刑事事件全体は7000~9000件といわれているので、これはかなりの割合です。
 裁判員裁判は司法制度改革の一つとして始まりました。平成11年に司法制度改革審議会が設置され、司法制度改革の三つの柱として、「国民の期待に応える司法制度」「司法制度を支える法曹の在り方」「国民的基盤の確立」が掲げられ、刑事訴訟への新たな参加制度を創設すべきだとして始まったのです。その後何度か改正がありましたが、ようやく軌道に乗った運営をしています。
 主に英米法の国では陪審制が、大陸法の国では参審制が行われています。どう違うかというと、陪審制では陪審員だけが裁判をするのに対し、参審制では裁判官と裁判員が一緒に裁判をします。どちらかというと、日本の裁判員制度は両方を足して2で割ったような感じです。裁判員制度は、国民が裁判に加わることによって国民の司法に対する理解を増進し、長期的に見て裁判の正当性に対する国民の信頼を高めることを目的にしています。
 裁判員は有権者から選任することになっていますが、70歳以上の人、学生、病気の人などは辞退することができます。「裁判も法律も知らないのに、裁判員などできるのか」と言う方が多いのですが、心配無用です。というのも、法律の専門家と司法関係者は元々排除されています。法律のことは裁判官がやるので、裁判員には事実の認定と量刑に知恵を絞っていただきます。
 量刑を決めるのは、簡単に見えてなかなか大変です。刑罰の考え方の中核をなすのは「目には目を」という考え方で、刑罰は応報だと考えられているので、刑罰は行為に見合ったものであることが大前提になります。「そうはいっても、大体の量刑相場はあるだろう」とよく聞かれます。事件は千差万別ですが、同じような事件は同じような結論でないと不公平なので、大枠の範囲内でとどめなければなりません。そこで、われわれの世界では「量刑検索システム」といって、似たような事件をデータベース化して量刑を決める参考にしています。
 それでも、「裁判員裁判で決めた刑が高裁でひっくり返されるではないか」という批判があります。高裁や最高裁は裁判官だけで裁判をしていますが、せっかく国民の声を反映した判決を破棄することがあります。それは、司法の世界では民主制だけが正しいわけではなく、多数決原理に親しまない部分もあるからです。その一つが合理性であり、公平性です。特に死刑については、不公平な死刑は絶対に避けなければなりません。死刑以外については、第1審で行われた裁判員裁判の結論がほぼ維持されています。
 「辞退者が非常に多いと聞くが、一般人には重荷なのではないか」ともいわれます。報道によると、平成21年には83.9%の人が裁判の呼び出しに応じたのですが、平成28年には約60%に落ちました。ただ、われわれは皆さんのご負担を前提にしながらも、メリットを感じています。それは、裁判官だけで議論しているのとは全く違う観点からの意見を頂くので、非常に参考になることが多いからです。
 引き受けたものの、途中で精神的負担に耐えられなくなった場合、辞めることはできるのかという質問を受けるのですが、辞めることはできるので心配は要りません。刑事裁判では刺激的な証拠に触れることがあるので、メンタルケアの体制も整備しています。

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2019年2月12日 (火)

「映画づくりはひとづくり、まちづくり」

1月24日卓話要旨
映画監督  瀬木 直貴 氏
(久保田 忠義会員紹介)
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   私の映画の原体験は、東宝のゴジラシリーズです。私のふるさとである四日市市は、実はゴジラによって最も破壊された街なのですが、4~5歳のときにゴジラの映画を見にいくと、見慣れた風景が銀幕に映っているのをとてもいとおしく感じたのを覚えています。小中学校ではアニメなどを見に行ったりする程度で、特に映画業界との接点はありませんでしたが、立命館大学に進学し、東映太秦映画村でアルバイトを始めたのをきっかけに、映画業界に接することになりました。
 私は新聞記者になりたかったのですが、就職活動で6社受けて全て落ちました。勉強もしていませんでしたから当然です。それで、やはり映画の世界に行きたいと思い、2年半だけ東映のグループ会社に勤めました。それ以降はフリーランスの立場で監督業をなりわいとしています。
 映画は、1秒間に24枚の写真が映っているのと同じです。映画には、人の心をかきたてる秘密が何かあるのではないかと思い、映画業界に入って30年が過ぎました。監督はライセンスが必要ではないので、誰でも映画監督を名乗ることができます。ただ、周りが認めるかどうかは別問題です。私たちがついていた監督が病に倒れたのをきっかけに、26歳のときにいきなり監督になるチャンスが巡ってきました。
 私は今まで17本の商業映画を撮ってきました。現在は地方創生ムービープロジェクトを展開していて、最新作は川栄李奈主演で、大杉漣さんの遺作となった「恋のしずく」です。
 映画館の観客動員は、昭和28年ごろの約11億人をピークに現在は1.8億人まで減っていますが、公開本数はかなり増えています。しかし、スクリーン数は横ばいなので、公開本数が増えると映画1本当たりの公開期間が短くなります。すると、1本当たりの映画に触れる人の数が減り、今ではその平均は15万人です。つまり、15万人が見たら大ヒットになるのです。
 日本映画の制作費は1億~2億円ぐらいかかっていますが、私は6000万~8000万円という低予算で作っています。しかもオリジナル作品なので、ベストセラーやコミックなどの原作メリットがなく、告知する機会がありません。また、オールロケで撮っていることが多いです。このように、オリジナルストーリー、オールロケ、低予算の三重苦なので、皆さんは私の映画を見たことがないのです。
 私は今まで、「ラーメン侍」「カラアゲ☆USA」「春色のスープ」などグルメ系の映画を多く作ってきました。食べ物は世界中で親近感のあるテーマです。また、人口減少時代においてどのように人口を増やすか、雇用を創出するか、地域にお金が環流する仕組みをつくるかという地方創生においても、食べ物は商品化がしやすく、なじみやすいのです。私は、和食がユネスコの世界文化遺産に登録されたタイミングで、「恋のしずく」を作ろうと考えました。
 お酒というのは米と水がであって、神様がそこに降りてきて生まれたと考えられていました。それと重ね合わせるように、男女が出会い、神様の仕業で恋が生まれるというふうに、酒と恋の物語にしようと思ったのです。この映画は、東広島市西条という町で撮影したのですが、西条駅前に現役の酒蔵が七つ建っています。こんな町は日本全国探してもここにしかありません。地方創生で交流人口を増やしていくために県外から人を呼び込もうと地元を説得し、皆さんと手を携えて映画を撮ることにし、昨年秋に公開しました。
 この映画はJR西日本のデスティネーションキャンペーンで取り上げられ、大阪、広島、岡山駅などでフェアが行われています。また、映画をフックにして商品化が始まり、酒蔵巡りのパスポートや酒器を作りました。「恋のしずく」「鯉幟(こいのぼり)」というお酒を地域の酒蔵や酒販店と開発しました。「恋のしずく」の直接経済効果は、昨年12月末時点で約1億7000万円あり、2億円は超えるといわれています。広告効果は少なく見積もっても5億円以上です。それにより、「第9回ロケーションジャパン大賞」で審査員特別賞を頂きました。昨年は西日本豪雨があったので、復興の象徴としてこの映画が評価されました。公開後の11月には、東広島市の観光客数が過去最高になりました。
 私はこれからもオールロケ、オリジナル作品、低予算で、映画を小さく作って大きく広げることを地道に続けていきたいと思っています。

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2019年2月 5日 (火)

「ボランティアと地域(コミュニティ)力」

1月17日卓話要旨
元三菱UFJ信託銀行 副社長 鈴木 祐二 氏
(福岡 正人会員紹介)

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    私は銀行を退職後、ボランティアの企画・コーディネートをしています。ビジネスは十分にやったので、今は社会への恩返しのステージにあると考えたからです。新しいこと、実務を伴うことは努力が要りますし、少しでも早く始めないと役に立たないと思いました。現在、杉並区の公立中学校の学校運営協議会長を務めていて、土曜授業の世話やプロが部活動を指導する機会をつくる支援などをしています。児童養護施設からの進学者支援にも取り組んでいます。
 また、子ども食堂や学習支援の会をボランティアで
行っています。子どもの貧困には二つの定義があり、一つは衣食住に事欠く絶対的貧困、もう一つは相対的貧困です。相対的貧困は、1人当たり可処分所得の中間値の半分に満たない状態を指し、13.9%が該当します。子どもにとっては貧しいことよりもみんなと同じことができないことの方が気になり、それが孤立感につながるので、私はこちらの方が気になっています。
 日本のひとり親家庭の比率は10%を超え、その相対的貧困率は50%を超えます。また、母子家庭の就業率は80%を超え子どもは家でひとりぼっちになりがちです。「孤食」という言葉がありますが、「食」への対応であれば不足する栄養の提供ですから行政の責任だと思います。しかし、私は「孤」の方にウエートを置いていて、ひとりぼっちの子に対し楽しさやにぎわい、居場所をつくるお手伝いをしています。「孤」の問題はどちらかというと心の問題ですから、行政ではなくボランティアで担うのがふさわしいと思います。
 われわれは、子ども食堂を大きな寺で行っています。場所さえあれば、あとはソフトウエアがあればいいので、児童館、民生委員、高齢者施設、学校、大学生、その他の地域の人々を集めてチームを作りました。このチーム作りが大事で、多種多様な人々が集まると力が出ます。そして、この子ども食堂を、同じ場所で小学生対象の寺子屋につなげました。ボランティアの人には「教えようとしないでください」とお願いしています。「援助」や「教える」という目線では子どもたちが来なくなることもあるので、子どもの目線に合わせることはとても大事です。この寺子屋は、いろいろな世代の人が子どもたちと対等な立場で一緒にいて、ひとりぼっちではない風景をつくることがベースになっています。今は保護者も教員もみんな忙しく、責任も重いので、そこに少し緩い立場にいる第3の大人がそばにいることに意義があると思っています。
 もう一つの例は、「ゆうゆう館」という高齢者向け施設での取り組みです。「シニアシェフとキッズシェフのひるごはん」といって、地域の高齢者と小学生が一緒に料理をして食べたり、地元の中学生を対象に「Café勉」という軽食付きの学習支援を行ったりしています。
 以前から周りにいる大人達が子ども達の為に一歩踏み込むと、お互いに仲間意識が生まれるのを実感しています。ソサエティ(社会)の語源はソキウス(仲間)です。ただ住んでいるだけでは社会でもコミュニティでもありません。コミュニティとは顔の見える社会のことであり、お互いが困っていることをカバーする治癒力や活性化する力があります(=地域力)。薄らいでいく地域力を再生する為、先ず何も無い所からでもボランティアを始め、そこから地域社会を掘り起こす。それが又ボランティア活動を担う力となると云う相互循環を引き起こそうとしているのです。
 これからはボランティアの担い手に変化が生じるでしょう。作業する人は山のようにいますが、プロデューサーが足りないのです。そこにビジネス能力のある現役が入ってくることを期待しています。今は第4次産業革命によって作業から解放され、時間的・空間的選択の自由度が高まっており、現役時代は仕事が全てで定年後に趣味やボランティアをするという時代は変わりつつあります。自分がやりたいことの中で、何をビジネスとして、何をボランティアとして、何を個人の趣味として取り組むかというバランスを取って、日常活動を多面的に行うビジネスパーソンが増えるでしょう。
 ボランティアには、次世代への恩送りができる楽しさ、地域を再活性化する楽しさ、新たな良き友に出会うことなど、多くの無形の報酬があります。昨年11月にはNPO法人を設立しました。これを機に、さらに領域を広げていこうと思っています。

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2019年1月22日 (火)

「中央分区IMのご報告」

IM実行委員長  岩﨑 俊治

1115日グランドパレスで中央分区IMが千代田6クラブで開催されました。本年度はガバナー補佐が中央分区では3人となり、松坂ガバナーの賛同も得ての区内開催になりました。当日は千代田区に今年出来た東京丸の内RCが加わり、355人の登録と170人の出席を頂きました。テーマは「ロータリーの親睦」1部では多田パストガバナーの基調講演を頂き、ロータリーの創始の親睦について検証して頂きました。2部では各クラブの方からそれぞれのクラブの親睦の在り方と、工夫された親睦活動の発表があり、他クラブの活動を知ることが出来ました。3部は懇親会です。今回は親睦がテーマであり、近年千代田6クラブの交流の場が無かったこともあり、IMを有効に活用させて頂きました。日本酒とワインのブースにミス日本酒の協力もあり、和気あいあいとしたひと時でした。参加・登録頂いた各クラブのロータリアンの方々に感謝申し上げます。皆様ありがとうございました。

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2018年12月 3日 (月)

「ロータリー財団月間に因んで」

11月8日卓話要旨
地区補助金委員会委員 浜田 章男会員
(木下 照雄会員紹介)
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    昨年に続いてロータリー財団の解説をすることになりました。居眠りしないでご辛抱下さいませ。地区委員として寄付のお願いでもありますが、個人的にも230ドルとか180ドルの寄付でしたら無理のない金額だと思っています。財団は設立されて100年を超えました。神田RCの皆さんからは年間約10,000ドルの寄付をいただいています。地区では上位のほうです。
財団の活動は超我の奉仕を推進するための財源として、皆さんの寄付で成り立っていることをどうぞご理解下さい。目的ごとに基金があり、年次基金・恒久基金・ポリオプラス・平和センターの4種類です。この4種にバランスよく寄付を、かつ全員に寄付をお願いしています。神田RCでは一人180ドルと理事会で決めて集めていただいており、地区目標の230ドルにはもう少しですが、あくまでも任意の寄付なのでやむを得ませんね。 
お話の主眼はこれが全てですが、これだけでは卓話にならないので、資料で説明を続けます。昨年度の当地区の寄付総額は690,000ドルでして、歴代2位の記録でした。平均額は229ドルだったので地区目標まであと1ドルです。どうしても年次基金だけに偏りますが、それは年次基金以外の理解が少ない、周知されていないということが云えます。年次基金は全クラブからいただいており、会員全員寄付のクラブは70クラブ中、42クラブです。皆様の寄付が財源となる補助金は既に63クラブが活用しています。寄付については確定申告で税制の優遇を受けられます。
財団の主要プログラムは分かりやすく3つで、ポリオの撲滅・平和フェローシップの奨学金・補助金活用です。ポリオはいわゆる小児麻痺で特に5歳以下の幼児に口から感染する、感染すると大人になってからも勤労意欲などが発揮できず、国家の一大事なわけです。写真はポリオサバイバーの女性です。幼いうちにワクチンで免疫を作り完治させる必要があります。9月時点でわずか18名までに抑えられています。
平和フェローシップへの寄付は運用益が奨学金にあてられます。2002年から始まり、日本では国際基督教大学にあり、毎年10名が2年間学びます。
地区補助金は8年間で61クラブが活用、100件を超え総額4,200万円が社会奉仕活動に充てられました。プロジェクト申請の年間スケジュール、留意点をご覧ください。3年前の寄付の半分が地区にもどり使えるシステムです。当地区の予算は約1,200万円、1クラブ最大60万円です。奨学金については海外の大学に留学する方若干名を支援します。
神田RCの今年の計画は三陸被災地の子供たちを米軍座間キャンプに連れて行って交流を行うというものだったのですが、予算の60万円のうち大半の50万円がバス代だったので、地区委員会としてはRIに推薦しにくいということで頓挫してしまいました。私も委員として力不足でしたし、知恵を絞っていただいた新さんには誠に申し訳ありませんでした。多額の交通費は認められにくいんですよね。これに懲りずに来年は新しい計画を練って下さい。
グローバル補助金は実施国と援助国のクラブが共同で実施する活動で、6つの重点分野に関係しなくてはなりません。神田RCでは石谷会長の年度に姉妹クラブの台北安和RCの青少年の麻薬撲滅活動に協力をしました。
地区委員会では随時カウンセリングをしていますのでお気軽にご相談を、と云いましても私のような慣れていない委員もいますので悪しからず。最後に本部の話です。国際ロータリーとロータリー財団本部の収入は1対4です。2016年度の財団収入は寄付が300億円と投資収益が100億円でした。財団はチャリテイーナビゲーターから財務の健全性・健全な運営が評価されています。チャリテイーナビゲーターはアメリカの慈善団体の格付けを行う機関であります。寄付に前向きにご協力下さい。来年度は一人230ドルになるように是非よろしくお願いします。

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2018年11月13日 (火)

「高齢者支援制度、ホームロイヤーを中心に」

10月25日卓話要旨
弁護士 奈良 正哉 氏
(新 健一会員紹介)
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 高齢者の財産管理を支援する制度には、ホームロイヤー、任意後見、民事信託、遺言、法定後見などがあります。
 50代、60代になると、親の法定後見人になっている方が結構います。これは家庭裁判所が管轄する制度です。認知症になって判断能力がなくなると、預金を下ろしたり、契約書にサインしたりするような法律行為ができなくなり、大概は親族が法定後見の申し立てを裁判所にします。後見人を選ぶのは家裁であり、息子が後見人になりたいと申し立てをしても、財産が多額な場合や相続争いが起こりそうな場合は、そのうちの1人を後見人にすることはありません。そうすると、弁護士や司法書士などが家裁によって選任されることになります。その場合、家族と面識のない人が、財産管理について100%の権限を持つことになります。つまり、後見人制度は財産を持つ本人のための制度であり、家族のための制度ではないのです。本人の財産をなるべく減らさないスタンスで管理するので、融通の利かない制度になっています。
 一方で任意後見制度は、本人が元気なうちに締結する契約であり、本人がなってもらいたい人を任意後見人にすることができます。だから、法定後見と違って、見ず知らずの弁護士が突然やって来るリスクはありません。自由に決めていいので融通が利きます。
 その前段階としてホームロイヤーがあります。任意後見の導入版で、個人の顧問弁護士の位置付けです。個人のお客さまに寄り添って、財産管理の面倒を見てくれる存在です。一番安くて月5000円で、見守りや法律相談のサービスが付きます。リクエストに応じて弁護士会がホームロイヤーを選び、契約前にお客さまのニーズや相性を審査することになっています。そして、ホームロイヤーがきちんとやっているかどうかを弁護士会で判断します。万一気に入らない場合は、交代もできますし、任意契約なのでやめることもできます。融通性があり、弁護士会の牽制も入る制度なので、導入として入れる意義はあると思います。
 遺言はハードルが高いイメージがあるため、大概の人は書きませんが、作成に当たっては公正証書遺言をお勧めします。裁判官や検察官のOBである法律のプロ(公証人)が作成してくれるからです。公証人は、遺言する人に内容を確認している様子をビデオに撮ったりして、遺言能力がきちんとあることを裏付ける証拠を持って作成しています。
 民事信託は家族信託と同じであり、財産管理の方法としては非常に優れた面があります。元気なうちから、自分が死んだ後、あるいは自分が死んで相続した人が死んだ後、二次的な相続が終わるまで、一つの契約の中で財産管理ができるものです。
後見人の選任は、法定後見では家裁が行うので、会ったこともない人が就任するリスクがあり、途中で撤回はできません。法定後見は、後見人が被後見人の財産を守るための制度ですから、財産はそれ以外の人の利益のために使うことはありませんし、冒険的な取引はしません。だから、被後見人が株式や投資信託をやっていても、そのまま続行することは難しい面があります。
一方で、信託は名義を変更するので、例えば賃貸不動産を持っていて息子に信託すると、登記上あるいは法律上、所有名義は息子に移ります。不動産屋が高齢者をだまそうとしても、所有権が息子に移っているので、財産を管理する安全性は格段に高くなるといえます。
 法定後見以外は、自ら契約することですから、自分が元気なうちに手当てをしなければなりません。成年後見の利用率は男性よりも女性の方が高くなっており、利用開始年齢も、女性の場合80歳以上が64%と高くなっています。これは女性の方が長生きで認知症になりにくいからと思われます。また、後見人になった人は親族が28%で、専門職が72%です。つまり7割は、親族にとって見ず知らずの人がなっています。
 認知症の人が現在400万人いるのに対し、平成28年度末の成年後見利用者は20万4000人なので、約5%に当たります。認知症の人は数年のうちに700万人ぐらいになるだろうといわれているので、不足することは間違いありません。特に、女性の専門職を望む人が多いので、今後不足するのではないかと思います。
皆さんや皆さんの親族が元気なうちに、ホームロイヤーのような安い手立てで女性の弁護士を確保しておくことは考慮に値するのではないかと思います。

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