落語と笑い
落語家 春風亭 一之輔氏
満場割れんばかりの拍手を、まことにありがとうございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
私はこれまでロータリークラブで3回ほどお話をさせていただいたことがあるのですが、来るといつも気になることがありましてね、鐘があるんです。そして、たまに鐘の脇に棒を持ってずっと立っている方がいらっしゃる。つまらなかったら鐘を鳴らされたらどうしようかなと思うわけで(笑)。本日はお招きいただきまして、ありがとうございます。一期一会と申しますので、お付き合いいただけたらと思います。
われわれ落語家は寄席をホームグラウンドに活動をしておりまして、今日もここが終わりますと新宿の末広亭へ行っておしゃべりを申し上げるのですが、それとは別にいろいろなところに出張して落語を申し上げることがあります。一番多いのが学校で、小学校や中学校、高校で、もうそろそろそういう時期になるのですが、学園祭ですとか伝統芸能鑑賞会みたいなのがありまして、そういうところに行くことがあります。
ちょっと前に「じゅげむ」という落語がはやりましてやったりなんかしますと、ああいうものは子どもの方がよく覚えているんですね。ちょっと間違えると「ああ、間違った」とかと指を指されたりする。なかなかあなどれないんです。中学校ぐらいが一番いいですかね、笑ってくれたりして。でもちょっと生意気でね。
この間行きましたのは越谷の中学校で、会場が体育館なのです。学校の体育館でやるのですけれども、控え室が近くていいだろうというので体育倉庫。マットか何か敷いてありましてね、横にバスケットボールとか跳び箱とかそういうものがある。そこで一人で寂しく着替えておりますと、500人ぐらいの中学生が体育座りして待ちながら、みんなでしゃべっているのが聞こえてくるのです。「春風亭一之輔って、聞いたことある?」「ない」「おまえは?」「おれもない」。「面白いかな?」「テレビで見たことないから、多分面白くないよ」「そうだよな」知らない、面白くないの大合唱でね。その後、一人すごいことを言いましたよ。「おれ、たとえ面白くても笑わない」と、すごいことを誓っていたりして。そういうところに出て行ってやるのですから、大変です。
でも、なかなかいい学生さんたちで、特に一番前で男の子が笑っていてくれて、「ああ、いいな。落語好きなのかな。こういう子は末には噺家になるのかな。うれしいな」と思っていたら、終わった後に楽屋を訪ねてくれました。それで、「今一番前で落語を聞かせていただきました。面白かったです。初めて古典芸能で落語というものを見ましたけれど、こんなに素晴らしいものが日本にあるとは知りませんでした」。言えますか、皆さん、そういうことが。「一之輔さんって、お若いのに、とても落語お上手ですね」。言えますか、皆さん、そういうことを素直な気持ちで(笑)。「ありがとう。偉いね、君は」と握手をして、「大きくなったら寄席に来てください」と言ったら、「分かりました。必ず伺います。伺いますけれど、一つだけ気になっているんですけれども、普段どういう仕事をしているんですか」。ぶっ飛ばしてやろうかと思いました(笑)。
普段からこういう仕事をしているんでございます。皆さんは神田に会社があるなり、そこで生まれ育った方々で、鈴本で小さいころから落語を聞いているなどという方もいらっしゃると思いますけれども、落語というものもなかなか難しいものでございまして、10分ですとか、今日は30分と言われていますが、長い話になると2時間を回る。もっと長いと十日通しでやるなどというのもありますので、これはなかなか頭が悪くてはできない商売です。利口な人はやらないと思いますけれども(笑)。そういう商売ですので、気を長くお付き合いいただければと思います。
***落語「青菜」***
春風亭一之輔氏プロフィール:
本 名 川上 隼一(かわかみ としかず)
芸 歴 平成13年 3月 日本大学芸術学部 卒業
平成13年 5月 春風亭一朝に入門
平成13年 7月 鈴本演芸場にて初高座
平成16年11月 二つ目昇進
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