「東京、大阪やっぱり違う!?」
11月13日卓話要旨
産経新聞編集委員 石野 伸子氏
私は産経新聞に入社して以来、30年以上大阪本社で仕事をしていましたが、3年前に東京本社勤務になりました。初めての東京暮らしは見聞きするものすべてが面白いことばかりで、それをコラムに書いていたものが、今年初めに『女50歳からの東京ぐらし』という本になりました。実は1カ月前に再び大阪勤務になったのですが、たった2時間半の移動でありながら、東京と大阪はずいぶん違います。
関西にいるときは、「歴史という点では、やはり関西でしょう」と思っていましたが、こちらに来て近現代の良さを感じさせる物にたくさん出合いました。東京には、江戸から東京になる過程で起こった歴史ドラマにつながる物や人が今でも多数残っているのです。私がそれを初めて実感したのは、お殿様の末裔という方にお会いしたときでした。大阪で30年もの間、文化部で記者を務めてきましたが、そういう方に実際にお会いすることはありませんでした。歴史的に見れば関西の方がはるかに古いですが、現在とのつながりという意味では希薄で、その辺りはさすがに東京だなと思いました。
私がお会いしたのは、越前松平家の第20代当主の松平宗紀氏です。氏を通じて、旧華族会館が霞会館という名前で今も脈々と活動を続けていることを知りました。霞会館は霞が関ビルの34階にありますが、そもそもあそこは旧華族会の所有地だったそうです。私は松平氏に霞会館に連れて行っていただいて、徳川様、大久保様といった方々とお会いし、大阪人としては得がたい体験をさせていただきました。現在、霞会館の活動は霞ヶ関ビル4フロア分の家賃収入で賄われており、親睦はもとより、歌会始での司会役や進行のお手伝い等をされているそうです。
私が書いた中で最も反響が大きかったのは、ミシェランの三ツ星レストランガイドについてでした。発表されてからではとても予約できないので、ここは入るだろうと思うお店を二つ選んでお食事をいただいてきたところ、なんと二つともフレンチの三ツ星に入りました。そのときの様子を新聞に書いたら、「新聞記者たる者がそんなミーハーなことをやっていてどうするんだ」というお叱りの言葉もありましたが、半分以上は「それで結局、おいしかったのか?」というものでしたから、やはり皆さん関心を持っておられるのでしょう。結論を申し上げると、さすがに三ツ星レストランはおいしかったですから、ぜひ奥様をお連れになっていただきたいと思います。一番のお薦めは、白金台にあるカンテサンスというフレンチレストランです。オープンして2年目で、シェフは33歳と若いのですが、前衛的なフレンチが楽しめます。夜と昼と行きましたが、お昼のランチコースで十分楽しめます。
もちろん東京は面白いことばかりではありませんでした。電車に乗ると、空いているのに入り口付近に立っている人が必ずいますが、東京の人は早く降りたいとか、早く前に進むことを第一義的に考えているからではないかというのが私の説です。
また、私のような典型的な大阪のおばさんにとって、店員さんとのちょっとした会話は楽しみの一つなのですが、東京の店員さんは絶対に乗ってきてくれません。いつもお弁当を買っている総菜屋さんで600円のお弁当を買ったとき、横にあった白玉ぜんざいがおいしそうだったので、値段を聞くと450円とのことでした。すでに1000円札を出していたので、大阪の乗りで「白玉だんごを1個減らしてくれたら買えるんだけれど」と言いました。大阪の店員さんなら、「白玉1個100万円」とか何とか必ず返してくれるのですが、店員さんからは何の言葉も返ってきませんでした。
引っ越しのときはもっと顕著で、同じ業者さんでも東京のおにいさんたちは必要最低限のことしかしゃべらなかったのに、大阪のおにいさんたちは会話が多かったので、こちらもリラックスできました。バイト生ですら、それだけ違いがあることに改めて驚いた次第です。
東京への一極集中によって、この数年で大阪は地方都市の一つに成り下がってしまいましたが、そんな中で私としては、大阪のおばさんの頑張りを記事に表わしていきたいと決意を新たにしているところです。
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