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2009年5月27日 (水)

「日本の森林の現状と将来―21世紀の循環型社会への対応」

4月30日卓話要旨
日本紙通商株式会社 特別顧問 竹上 八郎氏
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日本には3645万ヘクタールの国土があります。これを用途別に見ると、農地が13%、牧草地が2%、森林地が70%、その他15%と、森林地が大半を占めていることが分かります。ちなみにアメリカは国土の面積で比較すると日本の25倍ありますが、森林地だけで見ると10倍と、その差が縮まります。また、アメリカと同程度の国土を持つ中国は森林が13%しかありません、森林地としては日本の7倍程度です。
 森林は世界中にありますが、豊かな森林があるのは南半球・北半球ともに緯度30度±5度のベルト地帯で、中でも日本は最も条件のいいところに位置しています。日本の森林は天然林が50%、人工林が40%、その他が10%で、所有者別に見ると国有林が30%、民有林が70%となっています。また、日本の森林の特徴はよく管理されていることです。面積ではアメリカの10分の1しかないのに、材積は5分の1となっていますので、いかに密度が高いかお分かりいただけると思います。
 日本の森林蓄積はこの40年間、年率2~3%で成長しています。黙っていても毎年それだけ財産が増えるのですから、昔から山主さんに大金持ちが多かったこともうなずけると思いますが、現在は少し事情が違います。森林産業は山から木を伐り出し、製材して初めて経済活動として認められるのですが、現在日本で消費されている木材のうち、国産の材木は4分の1にすぎません。日本の森林は戦後50年の間に随分荒廃してしまったのです。
 終戦当時、エネルギー不足に陥った日本は、石炭をどんどん掘り、山には炭鉱で杭として使うためにカラマツが植えられました。しかし、その後燃料革命が起こり、石炭の需要が急速に減って、農家も里山の木を使うことはなくなり、山も里山も荒廃が目立つようになりました。そこで、林野庁は針葉樹を植えれば永久に住宅の材料として使えるだろうと考え、奥山・里山・平地林を問わず、全てに針葉樹を植えるという政策を取ったのですが、実際にそれらが使えるようになったときにはアメリカやカナダから来た外材に価格競争で負けてしまいました。そのために、せっかくの植林地が荒廃してしまっているのが現状です。
 では、どうしたらいいのでしょうか。山は木を伐り出してこそ再生できるので、材木を使うということを考えなければいけません。日本の家屋は30年サイクルで建て替えるという形で回っていますが、私はここに基本的な間違いが潜んでいると考えています。例えば英国では100年も前に建てられた家が使われています。これは、おじいさんの資産を孫が生かして使っているということで、長く使える家を建てれば孫子の代は豊かに生活できるはずです。彼らが我々と比べて豊かな生活を送っているように見えるのは、この辺の違いではないでしょうか。車でも、日本の車は70万kmは走れるのに、10万km走ったらスクラップにしていますが、はたして「作って壊して高度成長」で本当にいいのでしょうか。
 日本の住宅も本来は100年以上の寿命がありました。それは、柱に5寸角の材木を使っていたからです。現状は3.5寸角の材木を使っていることが多いのですが、皆さんが家を建てられるときはぜひ5寸角の材木を使っていただきたいと思います。
 前述のとおり、日本では広葉樹を残しておくべき森林に針葉樹を植えたものの、それが育った時には使わなくなり、森が荒れてしまいました。山の木は放っておいてはいけません。最も豊かな森は、例えば杉の場合、樹齢50~60年の木からなる森で、それを維持するには木をどんどん伐り出して更新していく必要があるのです。よくドイツの森は豊かだと言われますが、ドイツ人はこのサイクルをうまく回しています。日本では、今はそれができていません。もう一つ、日本では山に道路を造ることは罪悪だと考えられていますが、それはスーパー林道という間違った山道を作ってしまったからであって、道を入れることによって山を保全することができます。
 日本の森林は今は荒れていますが、よい森林を作るのはそんなに難しいことではありません。50年あれば変えることができます。森林から酸素を供出できる国などそんなにはありませんから、今は日本が世界一クリーンな国になるチャンスだとお考えいただいて、今後とも森林の再生にご理解とご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。

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