「脳卒中の救急医療体制」
4月16日卓話要旨
東京都保健医療公社豊島病院 副院長 山口 武兼氏
ご存じのように、脳卒中には血管が切れるもの(脳出血・くも膜下出血)と、血管が詰まるもの(脳梗塞)があります。平成19年には、脳血管障害で亡くなられた方の60%は脳梗塞で、脳出血26%、くも膜下出血11%と続いています。1955年ごろは脳出血が圧倒的多数を占めていましたが、脳出血に対しては国民的な運動として取り組んできた結果、近年、死亡者数が減ってきました。その一方で、高齢化により動脈硬化が進み、脳梗塞が増えてきたというわけです。
脳卒中の症状に頭の痛みがありますが、脳梗塞で頭が痛くなることは基本的にはないので、頭が痛くなったときは出血している可能性が高いです。くも膜下出血の場合、ハンマーで殴られたような激しい痛みが急に起こります。脳出血・脳梗塞では、その場所によって手足が動かなかったり、言葉が出なかったり、物が二つに見えたり、回転性のめまいが急に起こります。これら三つの病気は、CTとMRIで確実に診断できます。脳梗塞やくも膜下出血の場合は、さらにMRAや3次元のCT撮影を行ったり、直接カテーテルを足の付け根から入れて脳血管撮影を行って、動脈瘤の場所や血管が詰まっている場所を診断します。
脳出血では、大脳の外側の被殻出血と内側の視床出血が多く、被殻出血の大きいものは手術で治すことがあります。くも膜下出血で最も多いのが動脈瘤の破裂で、治療としては、開頭手術を行いクリップでとめる方法と、コイル塞栓術の二つがあります。それと同時に血圧を下げたり、血管れん縮を予防して脳梗塞が起こらないようにしますが、これをしなければ、手術がうまく行っても、1週間ほどして脳梗塞によって麻痺が起こることがあるのです。コイル塞栓術は、足の付け根から動脈瘤の中までカテーテルを入れ、そこからコイルを出して詰めるものです。手術に比べ、患者さんへの負担は軽くて済みますが、動脈瘤の形・場所によってできるタイプとできないタイプがあります。
脳梗塞は詰まる血管の太さによってラクナ梗塞、アテローム血栓性梗塞、心原性脳塞栓症の三つに大別されますが、心臓から詰まるものが飛んでくる心原性塞栓が最も太い血管で起こり、重症になります。これまで、詰まった所に関しては助けることができませんでしたが、血栓を溶かすt-PA療法の出現で、血液の流れを良くすることができるようになりました。2004年に出た「脳卒中治療ガイドライン」でこれまでの治療法が検証された結果、グレードAと評価されたのは、t-PAとアスピリンによる抗血小板療法だけでした。ただし、t-PAは発症してから3時間以内でなければ、副作用の方が強くなるので、使ってはいけません。つまり、検査や処置の時間を考えると、症状が出てから2時間以内に病院に来た場合のみ、使えるということです。また、高齢者や内科の病気がある人はリスクが高くなるため、実際に使えるのは2%という統計結果が出ています。全例に使えるわけではありませんが、使った場合には劇的な改善が期待できるのが、t-PAなのです。
現在東京都では、脳卒中の治療に重点を置いて取り組んでおり、東京都脳卒中急性期医療機関として155の病院を搬送先に指定しています。その際大切なのが、早期発見と迅速な搬送です。突然顔のゆがみが起きる、閉眼で両手を10秒挙げて左右同じようにできない、物や自分の名前がうまく言えないといった症状が一つでもあれば、7割の確率で脳卒中が考えられます。間違っていても構いませんので、病院に行き、早く治療を始めることをお勧めします。
脳卒中が起きないに越したことはありませんから、皆様にはまず予防に努めていただきたいと思います。脳卒中は生活習慣病の一つですから、予防可能な病気です。幾つか危険因子はありますが、特に家族歴のある方と高血圧の方は注意が必要です。また、心房細動のある人は血栓ができやすいので、内科や循環器の先生にご相談ください。このようなケースでは、血圧のコントロールとワーファリンの服用が非常に有効で即効性があります。
皆さんができる予防としては、適度な運動を行う、食事に気を付ける、水分をコップ半分程度余分に摂取するなどがあります。生活習慣を見直し、きちんとコントロールするだけで、脳卒中の発生率はかなり下がりますし、遅らせることも可能ですので、少し気を付けて予防に努めていただきたいと思います。
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