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2009年6月17日 (水)

「急変貌する韓国(3)」

5月28日卓話要旨
前韓国国立慶尚大学 招聘教授 新井 宏氏

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韓国では、この1年の間に実にさまざまな事が起こりました。ウォンが大暴落し、日本円に対しては半分にまでなったことはご存じのとおりですし、直近の1週間を見ても、盧武鉉前大統領の自殺、北朝鮮の核実験ととんでもないことが起こっています。
 盧武鉉政権が誕生したのは2003年のことでした。韓国は先進国と後進国の両方の側面を持っている国で、私どもから見ると驚くような行動に出ることがありますが、盧武鉉大統領はまさに後進国のメンタリティーを持った人で、先進国部分の汚さを批判することで一気に大統領まで駆け上がりました。しかし、経済に強いわけでもなかったため、韓国経済はとたんに行き詰まり、彼を支える若いスタッフたちは現実世界の中で次々と汚職にまみれていきました。
 一気に支持率が下落した彼が勝負手として打ったのが、日本叩きです。韓国では日本叩きをすればすぐに支持率が上昇しますが、行き過ぎた日本叩きは韓国の先進国としての側面を呼び覚まし、支持率は再び下落します。ほかにも、韓国は出生率や大学進学率などで先進国的な数値を示していますが、その中で、盧武鉉政権下では離婚や自殺、独居など社会的な問題が一気に噴出しました。
 ウォン大暴落の原因が、盧武鉉大統領の後進国的な政治形態であったことは間違いありません。米国が急速に金利を下げた時、韓国だけは金利を上げたので世界中が驚いたのですが、これは明らかに金利政策の失敗でした。革新系の政権ゆえにインフレに耐えることができず、不動産バブルを避けようとして金利を上げたのですが、本来弱くなるはずのウォンが維持されてしまい、世界不況の中で金利を下げざるをえなくなって、わずか数カ月でウォンは大暴落したのです。
 その結果、貿易収支が赤字に転落して経常収支も赤字になり、対外資産や外貨準備高が一気に減少したのですが、経常利益を赤字にしている要因の一つには、異常なまでの留学熱があります。米国への留学生は日本の倍以上もいるのですが、これは人口比からすると考えられない数字です。工業はどうかというと、相変わらず典型的な組み立て産業型で、完成品としての質は向上してきましたが、部品を作る中小企業はまだ育っていないため、日本や中国から調達しています。
 そんな中で登場したのが、李明博大統領でした。彼は現代建設の社長、ソウル市長という経歴を持ち、経済を建て直すべく登場しました。ところが、李明博政権でも経済がうまくいかないため、国民は既に苛立っており、与党は4月に行われた国会議員の補欠選挙で全敗しています。
 一方、盧武鉉前大統領は600万ドルという巨額の収賄容疑によって取り調べを受けましたが、韓国は昔から政争が激しい国で、権力の交代時には報復が付きものでした。500年続いた李王朝では実の親子や兄弟の間で幾度となく殺し合いが繰り返されていて、そういう風土があるからか、韓国の歴代大統領の中で、引退後まともに余生を過ごした人は一人もいません。
 盧武鉉氏はその後、自殺したわけですが、これまでも彼は勝負手を打って状況を変えてきましたから、うがった見方をすれば、今回の自殺もそれを狙ったのかもしれません。実際に、もしかすると李明博大統領に対する批判が噴出するのではないかと思われていたのですが、まさにその時、北朝鮮の核実験のニュースが飛び込んできて、その気配は一気に失せてしまいました。
 いずれにしても、李明博政権にとっては盧武鉉政権の尻拭いだけでも大変です。盧武鉉大統領が進めた北との融和策によって、約100社の企業とその人材が北に渡っていて、それらを取り戻すことは並大抵のことではできません。今回の核実験にしても、500億円もあればできるそうですから、韓国が北朝鮮に対して行ってきた年推定100億円の援助が大きく関与したのは間違いないでしょう。
 今後については、ここまでウォン安が進むと、ある意味、輸出が好調になってくると考えられます。現に自動車の輸出もどんどん増えていますから、弱かった中小企業もあるいは力を付けてくるかもしれません。その意味では日本に非常に大きな影響をもたらすことになるので、今後の動きを注視していく必要がありそうです。

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