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2010年2月 8日 (月)

「2010年不動産市場の展望」

1月21日卓話要旨
株式会社不動産鑑定ブレインズ代表取締役 山路 敏之氏
(芝﨑 孝会員紹介)

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 1990年にバブルが崩壊したことで、我々は初めて土地が下落することを認識しました。その後の「失われた10年」は、不動産市場にとってもまさに「失われた10年」でした。都市基盤整備公団(現在の都市再生機構)は、バブル崩壊によって虫食い状態で残っていた土地を購入して、きちんとした土地にして民間に回すという、実に有意義な仕事をしましたが、自民党政権下で何千億円あった予算が、現在は吹き飛んでいます。
 各金融機関が持っている不良債権をまとめて、たたき売って処分するバルクセールが始まると、利回り10%を超える不動産も出てきて、比較的景気がよかったアメリカから資金が流入しました。「ハゲタカファンド」と呼ばれた彼らは、利回りと売買差益によって荒稼ぎします。世界中の投資家のお金が日本に入ってきた結果、2001年に我が国で初めて不動産投資信託J-REITが発足しました。これにより、数十万円という少額の元手で不動産に投資できるようになりました。
 それとは別に、少し元気になった日本の不動産会社の間で、私募ファンドを作って賃料収入を配当金に回すスキームができました。その結果、安定した賃料収入が見込める千代田区、港区、中央区のAクラスのオフィスビルの価格が上がり、物件がなくなると商業ビルやマンションが買われ、さらにはBクラスの建物、あるいはホテルや物流施設が買われました。こうしてカテゴリーが広がる一方、地域も前述の3区から周辺の区や、東京近郊から地方都市まで広がっていき、結果として起こったのが、2年前にクラッシュしたミニバブルです。私は「失われた10年」から復活した最大の原因はこれだと考えています。
 不動産を購入する際は、基本的に銀行から借り入れますが、例えば利回り6%の物件を年利2.5%で借り入れたお金で買った場合、投資家はその差3.5%分のイールドギャップをストックしていくわけです。また、前述のJ-REITには出口戦略としての機能が生まれてきました。三菱地所や三井不動産や森トラストはそれぞれREITを持っており、それを右手で持ちながら左手で自社で買い、出口としてJ-REITに移すのです。三井不動産と三井不動産のREITは全く別法人ですから、10億円上乗せしてREITに売れば、三井不動産は10億円もうかったことになります。こうして出口としてJ-REITを使うことで彼らの本業は飛躍的に伸び、その結果2006年末にはミニバブルがピークを迎えました。
 こういうおいしい話には反社会的な人たちが入り込むので、それを排除するためと、地価高騰を懸念して2006年春ぐらいから金融機関は引き締めに入りました。また、マンションの建築費が高騰して、事業採算性が合いにくくなってきていたところに、耐震偽装の発覚で役所が建築確認をスムーズに下ろさなくなり、結果的にデベロッパーの保有コストは上昇しました。供給過剰で需給バランスが崩れてきたところに、アメリカのサブプライム問題が認識されてきて、2008年には我々の想像を超える形で世界同時不況の波が襲ってきました。そのままの勢いで2009年に突入しましたが、春には海外投資家から資金が入ったおかげで、危機的状況に陥っていた多くの日本企業が一息つくことができたのです。
 さて、そんな中で今年はどうなるかということですが、まだ民主党政権になったばかりでこの先の予想は難しく、今は様子を見るしかないでしょう。新聞には企業業績が回復傾向にあるように書かれていますが、私はこれについては疑問を持っています。非常に大きなリストラを行って、取引先を絞めつけた上での回復であることを皆知っているので、景況感は全く改善していません。アメリカもネガティブですし、これらのことから不動産の需給動向を見ると、「買いどきと思っている投資家と、買いたたかれたくない売主との綱引きになるだろう」というのが私の見方です。「底が見えない」と言いますが、皆が我慢して売らないためにマイナスが顕在化されず、景況感がなかなか変わりません。マンションの供給抑制が続いて、デベロッパーは買い控えていましたが、次々期の仕入れがないことに気付いて少し仕入れ始めています。消費税の導入があれば、駆け込み需要があるでしょうが、今年はそれもないでしょう。また、割安な価格であれば、実需はあります。これらを総合して考えると、今年1年はどうもマイナス材料が大きいように思われます。やはり皆さんの共通認識として、「ここが底だよね」というものがなければ、今の景況感から脱するのは難しいと私は見ています。

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