« 「体験的アンチエイジング」   | トップページ | 「ロシア旅行記(珍道中)」    »

2014年6月17日 (火)

「人権の擁護」     

5月15日卓話要旨      
法務省人権擁護局長 萩原 秀紀氏
(宗宮 英俊会員紹介)

1

裁判官に任官して31年以上になりますが、そのうち約12年近くは法務省や金融庁の証券取引等監視委員会など外の世界で、それ以外は裁判所で勤務してきました。平成24年からは法務省の人権擁護局長というポストで仕事をしております。本日は、人権に関して、現在、どのような課題があるのか、またそれに対して法務省の人権擁護機関がどのような取組をしているか、何を目指しているかということをお話しさせていただきます。
法務省の人権擁護機関の活動は、大きく分けて調査救済、人権相談、人権啓発です。
我が国の主要な人権課題を対象から見た場合、女性、子ども、高齢者、障害がある人、同和問題、外国人などがあります。まずは女性については、就職などにおいて男性と比べて差別されたり、あるいはDVのような虐待の被害を受けるという人権課題があります。子どもについては、いま一番問題になっているのがイジメと体罰です。また高齢者や障害のある人では、家庭内や施設内での虐待の問題があります。外国人に対する人権問題としては、最近マスコミで取り上げられているヘイトスピーチなどがあります。
最近はインターネットにおける人権侵害も増えています。ネットの掲示板に個人の実名、さらには写真まで載せるなど、プライバシー侵害が多く見られます。
さて、それではそうした人権問題に取り組んでいる法務省の人権擁護機関とはどういうものかと申しますと、まず法務局が全国8箇所にあります。さらに地方法務局が各県庁所在地に置かれ、その中に人権擁護事務を担当する職員がおります。それとは別に、法務大臣から委嘱を受けた約1万4千人の人権擁護委員が全国におります。位置づけとしては民生委員や保護司と同様に民間のボランティアということになります。世界に類を見ない日本独自の制度であり、外国から人権擁護局を訪ねた方が一番関心を持ってお尋ねになるのが人権擁護委員の制度についてです。
まず、人権侵犯事件の調査・救済についてお話しいたします。人権侵害を受けた、という申告を受け、その疑いありと判断した場合は立件をいたします。関係者から任意の協力を得て行う任意調査のみ可能です。
そうした調査を行い、人権侵害が認められた場合は、人権侵害を犯した相手方に対して説示、あるいは勧告を行います。これらの措置については強制力はありません。強制的な形で人権侵害を防止あるいは被害を回復する場合は裁判に訴えるしかありません。それゆえ私どもの活動の位置づけとしては裁判前の紛争解決手続(ADR)ということになるかと思います。
さて、では具体的活動としてはどのようなものがあるかと申しますと、たとえばインターネットの書き込みなどによる名誉毀損、プライバシー侵害の場合、被害を受けている方から申告を受け、人権侵害が確認できた場合は、プロバイダーや管理者に対して削除要請を行います。強制力はありませんが、裁判を起こすのに比べ、ネット上の名誉毀損あるいはプライバシーの侵害情報をすみやかに取り除く上で有効な方法と考えています。
また、学校でのイジメについては、イジメを防止できなかった学校の安全配慮義務違反ということで学校の校長先生を相手方として調査を開始いたします。学校におけるイジメの人権侵犯事件の一番多い決着は援助です。すなわち、子どもがイジメを受けている事実を学校と関係者に認識してもらい、二度とイジメを起こさないような見守り体制を、学校全体、さらには教育委員会も含めた形で作っていただけるよう法務局が関与する方法が援助ということになります。
ちなみに、私どもでは全国の小学校、中学校のすべての子どもたちに「子どもの人権SOSミニレター」というものを配布しています。切手を貼らずに出せるよう返信用の封筒が付いているもので、それによって子ども自身が直接法務局にイジメや体罰などについて相談をできるようにしております。
加えて、現在はまだそこに至らなくても、将来人権侵害になり得る可能性がある場合に、事前にその芽を摘み取ることも大切であると考え、宣伝や行事などによる啓発にも取り組んでおります。私どもの目指すところは人権尊重社会を作ることです。今後とも私どもの活動にご協力をよろしくお願いいたします。

|

« 「体験的アンチエイジング」   | トップページ | 「ロシア旅行記(珍道中)」    »