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2017年10月 3日 (火)

「2020東京オリンピック・パラリンピックを見据えて」

9月7日卓話要旨
東京オリンピック・パラリンピック組織委員会理事 米村 敏朗 氏
(纐纈 公夫会員紹介)
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    私は、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の理事兼CSO(チーフ・セキュリティー・オフィサー)として五輪のセキュリティー全般を統括しています。セキュリティーの問題は、基本的に全てのロジスティクスに関わってきます。2013年9月7日に東京五輪の開催が決まり、10月28日はちょうど1000日前となるので、もう間近だという感じがします。
 東京五輪は1964年以来、まさに56年ぶりの開催となります。1964年の参加選手は163種目、5152人でしたが、2020年は現時点で339種目、1万1090人ですから、ちょうど2倍です。にもかかわらず、大会期間は1964年が15日間であるのに対し、2020は17日間と2日間しか長くありません。その短い期間中にこれだけ多くの競技をセットするのは大変な作業です。
 私の仕事のメインは警備です。1972年のミュンヘン五輪ではイスラエル選手が人質となる事件があり、1996年のアトランタ五輪では爆弾テロ事件がありました。最近のテロ情勢も踏まえ、警備に対するIOCの要求はかなりレベルが高く、今では競技会場はことごとくフェンスで囲み、来場者はセキュリティーチェックをするのが通例になっています。
 一方で、2020年の東京五輪は、コンパクトに開催すると言いながら、地方会場がどんどん増えています。現在、39会場中16会場が東京都外での開催になりました。過密都市の東京で、多くの競技をスムーズに行うのはもともと至難の技だったからです。
 五輪の警備を考える場合、やはりリスクに対してどう対応するかを考えなければなりません。例えば会場にしても、来場者はもちろん、そこへ入ってくる車、荷物、貨物などの全てがセキュリティーチェックの対象になります。1万1000人を超える選手に加え、約30万人の関係者や約2000万人の観客をどうコントロールするかが重要です。
 特に一般の人たちにどうスムーズに会場に入ってもらうかという問題があります。日本の7月24日から8月9日までは酷暑の季節であり、暑さ対策は非常に厄介です。リオデジャネイロ五輪でも、入場に1時間待ちはざらでしたが、日本ではさらに厳しい状況が考えられます。そこで、新しい技術を使って精度を高めながら、スピーディーなセキュリティーチェックの実施を検討しています。
 また、大会運営は、コンピュータへの依存度を高めています。近年の大会では、様々なサイバー攻撃が必ず問題になっています。組織委員会では、CSIRT(Computer Security Incident Response Team)を既に立ち上げていて、徐々に体制を強化しつつあります。
 私は、セキュリティー面について一般の人たちにあらかじめ知っていただく必要があると思います。例えば会場に入る際、手荷物をどの程度にするかなど、いろいろな問題があります。もう一つ大きいのは、突発的な豪雨が発生したときに、会場にいる人たちの安全をどう確保するかという問題です。また、中止になった競技をどこで実施するかという予備日の問題も深刻です。
 オリンピックの最も重要な要素は各イベントがしっかり行われることですが、そのためにはセキュリティーが問題なく確保できることに加え、選手と物の膨大な移動をどう確保するかという問題が非常に大きいです。  私たちは築地市場が移転後、環状2号線を地下に通して五輪会場に人を円滑に運ぶ構想でしたが、断念しました。現在、都知事を中心にいろいろなことを考えています。
テロ対策の最大の眼目は、未然防止です。2001年の9.11米同時多発テロでは、テロに関わる人物の不審情報が事前に幾つもありましたが、その情報が活用されなかったことがテロを防げなかった大きな原因だと思います。一方、日本では6月に組織犯罪処罰法が改正されました。徴表行為を事前に把握することは難しく、結局は情報がないと、なかなか未然に手を打てません。
この1000日間でやるべきことはたくさんあります。課題を何とか解決して、しっかりした五輪にしたいと思います。リオ五輪はバックヤードでたくさん問題がありましたが、終わってみるとグレートサクセスでした。それはやはり選手が生んだ感動があったからです。五輪の感動は、世界中の人が共有するものです。その感動をしっかりと担保できる五輪にしたいと思っています。

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