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2018年5月22日 (火)

「更生保護法人両全会の社会復帰支援活動」

月12日卓話要旨
更生保護法人両全会 理事長 小畑 輝海氏
(野村 憲弘会員紹介)
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   刑事司法を取り巻く環境はものすごく変化しています。一昨年には再犯防止推進法が成立しました。犯罪発生件数が激減しているのに、再犯者は減っていないからです。再犯率が減らないのは、一度罪を犯した後、社会に復帰したときに、受け入れる基盤が整備されていないためです。そこで国は、推進法に基づいて再犯防止推進計画を策定しました。私も計画の検討会の委員に任命され、1年間参加しました。
 われわれ両全会は、全国で7カ所しかない女性専用の更生保護施設の一つです。刑務所や少年院から出た人たち(刑余者)を預かる期間は平均4カ月と短いのですが、刑余者が立ち直る上で、その4カ月間に就労と住居の環境を整えることが最も重要です。両全会は参宮橋駅前にあり、就労しやすい立地なので、当会の刑余者は清掃や調理補助、ホールスタッフ、コンビニなどに就労しています。ただ、女性向けの仕事があまりないので、皆さまのご協力を頂けたらありがたいと思います。
 彼女たちの一番の課題は、きちんとした仕事に就く習慣を付けることですが、刑務所等に入所する前に、汗水を垂らしてやるような仕事をあまりしていません。半数は生活保護を受けていて、あとは夜の仕事などに就いていました。逆にいえば、真面目に一生懸命に働いている人が刑務所に行くことはあまりないのです。社会復帰のためには、きちんと就労する習慣を付けることが重要なので、両全会に入った人はほぼ全員が就労しています。
 国は刑余者の就労に非常に前向きになっており、協力雇用主に対して奨励金制度などを設けています。私が法務省にいた頃には考えられなかったことです。中には障害を持った人もいますので、社会福祉士が刑務所職員として勤務したりして、再生に向けた支援をしています。また、更生保護施設に来てから就労を考えていても遅くなるので、刑務所入所時から刑務所と保護観察所とハローワークが連携し、本人の就労を検討する仕組みになっています。最近、矯正就労支援情報センター(通称コレワーク)ができ、在所中から就労希望者の情報提供制度が発足しました。
 一番の心配は、刑余者を雇っても大丈夫なのかということだと思いますが、当会では勤務先で違法行為をしたケースは、私が勤めるようになったこの10年で一度もありません。刑余者の女性で一番多いのは薬物事犯者であり、専門のカウンセラーなどが心理学的療法で再犯防止を図っています。
 両全会では民間協力者40人程度にご協力頂き、カウンセリングやパソコン指導などをしていますが、問題は施設を出てからケアをつなげていくことです。それが不十分だと、再犯につながります。女性の場合に難しいのは、男性に依存的な面があるような場合です。刑務所を出てから2~3年は再犯率が高いので、その間は相談員をつけてケアしていく態勢が必要だと思います。住居と就労とケアの3点セットで、更生保護施設を出た後の中間施設をつくり、そこでトレーニングしてから企業に就労するとより完全なのではないかと思い、現在計画しています。
 日本が成熟した社会になるには、格差を拡大させないことと、刑余者や障害を持った方々が社会に組み込まれていくこと(社会的包摂)が必要です。それが安心・安全な社会につながると思います。一億総活躍社会の中には刑余者も含まれることを国も認める時代になったので、あとは国民がどう受け入れるかが重要だと思います。
 両全会では、職員が本人に毎日声掛けをし、寄り添いながらケアしています。それから、日課として掃除を20分間全員で行っています。ですので、施設内はとてもきれいです。そうして就労の習慣を付けることで、就労先でも褒められて、喜びが得られます。両全会に入った人の再犯率は数パーセントです。
 刑余者の女性たちの多くは、小さい頃の境遇が恵まれていません。親の愛情が十分でなく、情操が育つまでの文化的環境に恵まれなかったため、社会に溶け込めないでいるので、その点を改善できればと思っています。人を社会的包摂するのは大変なことですが、北欧の矯正関係のトップの話を聞くと、最終的には国民意識の問題にたどり着きます。北欧では刑余者を社会全体で受け入れる意識になっていますが、日本ではなかなかうまくいきません。政府は再犯防止推進法を制定し、地方自治体と関係団体の連携を一番大きな目標に掲げているので、これからのフォロー体制はだいぶ進んでくると思います。

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