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2018年9月11日 (火)

「病院、コンビニ用等非常用電源としての水素の備蓄」

6月14日卓話要旨
(株)新エネルギー研究所 代表取締役研究所長 亀田 光昭 氏
(久保 和人会員紹介)
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   東日本大震災ではライフラインの分断により、非常用電源を持たない中小の病院やコンビニなどで手術や冷凍食品の保存ができず、大きな社会問題となりました。対策として、いろいろな形のエネルギーの代替品が開発されていますが、一長一短があります。日本は原子力発電に代わるものとして火力発電に活路を見いだしていますが、火力の燃料は石炭、天然ガス、石油等の化石燃料であり、地球温暖化という大きなマイナス要因をもたらす二酸化炭素(CO2)を大量に発生します。日本はパリ協定で、2030年までにCO2を26%削減(2013年比)することを国際公約しています。その中で非常に注目されたのが水素を利用した燃料電池です。
 再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力、地熱、バイオ、潮力、波力)は、電線を使ってそれぞれの消費者(地)に送る系統電力としてあまり適当ではありません。発電量と消費量をバランスさせることが電力会社の仕事であり、発電された電力を取っておく方法として考えられたのが、水を電気分解して電力を水素の状態でためておく方法です。水素を備蓄するためには、一般的に温度を下げて液体にする方法がよく知られています。この方法によって、岩谷産業はオーストラリアの安価な褐炭を使って水素を製造し、川崎重工業はタンカーを造って日本へ運び込もうとしていますが、そのタンカーがまだできていません。非常に低温で管理しなければならないので、なかなか難しいのだと思います。
 それに対し東芝などが推奨しているのは、ガスタンクの中に水素を高圧ガスとしてためておく方法です。トヨタ自動車やホンダなどが開発している燃料電池自動車は、非常に高圧の水素ボンベを積んで走ります。しかし、高圧ガスや液体水素は純粋な水素なので、使い勝手は極めて良いのですが、日本国内の水素単価は1Nm3(0℃、1気圧における1m3)当たり100円と非常に高いのです。そこで国は今年12月に水素基本戦略を発表し、2030年には30円、将来的には20円にする計画です。なかなか難しいですが、これらを実現させないと、日本は国際公約を守れないと思います。
 燃料電池は水素を燃料源とし、熱と電気だけを発生するので環境には非常にいいですが、現段階では燃料電池を作るために非常に多くのCO2が発生します。そこで、日本は世界に先駆けて、CO2が出ないような水素エネルギー社会をつくろうとしています。
 サウジアラビアなどの産油国では近く、原油を石油としてではなく、化学工業の原料として輸出することを決めています。代表的なのがナフサですが、似たようなものに一酸化炭素(CO)とCO2があります。COと水を反応させるとホルマリンになり、CO2に水素を反応させるとメタノールになります。さらに、サウジなどでは広い砂漠で太陽光発電をしていて、太陽光による電力価格は1kw=1セント(1円)を切ろうとしています。日本の太陽光電力の価格は18円、火力は10円ですから、もし1円の電力を使って水を電気分解すれば、とても安価な水素が大量に増えて、余るようになります。また、化学工業の原料としてCOやCO2が使えるようになれば、水素が大量に余ります。その水素に目を付けたのが三菱商事、三井物産、日本郵船、千代田化工であり、産油国で余った水素を大量に日本へ持ってこようとしているわけです。
 その運搬・備蓄方法として有機ハイドライドがあります。一つは、現地でトルエンに水素分子を結合させてメチルシクロヘキサンにして日本へ持ち込み、再び水素を取り出す方法です。これは現在使っているタンカーがそのまま使えます。もう一つは、メタノールと水を反応させる方法です。現在、三菱ガス化学や三井化学などがメタノールにして日本に運んでいます。
 水素は今まで非常に高価なものと考えられていましたが、こうした方法が本格的に進めば安くなります。また、CO2自体が悪者なのではなく、燃料や樹脂など化学工業の原料にする考え方に変わっています。三菱商事や千代田化工は、ブルネイから常温の化学品にして水素を輸入し、水素で発電しています。また、NEDOはCO2を利用してメタノールとオレフィンを製造しようとしています。このように、CO2をストックする考え方から利用する考え方になりつつあります。
 現在、非常用電源を最も必要としているのは、病院やコンビニではなく携帯電話などの通信関係です。その非常用電源として、われわれは燃料電池を提案しているのです。

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