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2018年10月 9日 (火)

NPO法人江戸城天守再建を目指す会から、公益財団江戸・東京歴史文化ルネッサンスへ

9月6日卓話要旨
一般社団法人江戸・東京歴史文化ルネッサンスの会執行役員 

黒田 裕治 氏(内藤 勝弘会員紹介)

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   東京には、世界に発信するようなこの国を代表するランドマークがありません。そこで江戸城の天守を再建して、東京のシンボルにしようというのが活動の原点となっています。NPO法人江戸城天守再建を目指す会の創始者である小竹直隆代表理事が、東京国際フォーラムの役員としてインバウンドの誘致活動で世界を回っていたとき、パリならエッフェル塔や凱旋門、ロンドンならバッキンガム宮殿、ニューヨークなら自由の女神というふうに、都市のブランディングができる建造物があるのに、東京には日本らしい建造物が現存してないという発想から実現に向けてのNPOを設立しました。
 実際に天守という、あれだけ高い建物を建てるとなると、とても大きな柱が必要になります。NPOでは、その柱をどうするのかといったような技術的な議論が中心でした。そうして運動が広まっていきましたが、東京に住む人たちのコンセンサスは得られているのかという大きな課題に直面しました。そこで、天守を含む江戸城を建てる意義と役割を広く伝えるために、NPO法人から一般社団法人となり、さらに現在は公益財団法人化の取得を目指しているところです。
 活動の中では、「日本」を世界にどう紹介するのかという観点と、訪日観光客をどう呼び込むかという観点が重要になります。日本は多くのインバウンダーが訪れるようになりましたが、これからは人口減少問題が深刻となり、国力が低下することが考えられます。そこで重要になるのが観光振興による「交流人口」の増加です。日本の観光は、現在の訪日客急増現象を含めて3度のブームがあったと考えていいでしょう。 1度目はマルコ・ポーロが『東方見聞録』で「黄金の国ジパング」と紹介した頃の時代(実際の訪日とはなりませんが日本という国が認識されました)、2度目は19世紀のジャポニズムの流行、そして3度目の現在は、漫画やアニメがブームの下地になって多くの訪日観光客が溢れています。そういう背景の下、日本は「国策」として観光立国を推進しており、観光ビジョン(観光ビジョンの実現に向けたアクション・プログラム2018)の中で文化財の紹介の仕方や保護・保存の仕方をきちんと考える方針を掲げています。そして、日本文化を正しく伝えるため、地域の文化財を一体的に整備・支援することにしています。つまり、東京なら東京という地域全体を考える方向性になったわけです。
 例えば、赤坂迎賓館は従来、一般の人は入れませんでした。しかし、明治の日本文化を伝える素晴らしい建物ですから、これを見せながら保存・活用しようという方向に転換しました。今では迎賓館ツアーには多くの方が参加していますし、実際に見るととても感動します。一方、東京駅でもプロジェクトが進んでいます。ただ補修するだけではなく、保存・復元・耐震の要素を加えているのです。従来の文化財保護の考え方とは異なり、未来に遺産をつないでいこうとする発想に転換したことが大きなポイントです。
 2014年には「東京文化資源会議」が発足しました。上野、本郷、谷根千、神保町、秋葉原、神田、湯島などの特徴ある文化を保護育成することが目的です。2017年から当財団も会議の輪の中に入ることができました。地域一帯を精査し未来につなげていこうという考えを持っていないと、江戸城を建てる意味はないということです。さらに東京を含む関東地域のことを考えるときに「江戸時代」だけを見ていたのでは意味がなくて、時空を超えた発想を持たないと次につながる観光という資源にはなりません。観光という言葉は『易経』に由来していて、「国の光を観る」で観光なのです。光とは何かというと、その国の未来であり、未来とはそこで生き生きと生活する若者の姿のことです。それを観に行くのが本来の意味です。アニメをきっかけとして日本に興味を持っていただいたのです。
日本は、国際社会への参画をずっと目指してきました。明治6年(1873年)には、国際博覧会に出展しています。これがジャポニズムの流行につながったといわれています。昭和15年(1940年)の紀元2600年記念日本万国博覧会や幻の東京オリンピックも、国際社会の一員となるために計画された国策でした。こうして日本は、国際社会へのアプローチをずっと続けてきたのです。
当財団では、公益財団法人格を取得してしっかりと活動を続けていきたいと考えていますので、今後ともご理解とご支援をお願い申し上げます。

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