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2018年10月 9日 (火)

「地域現場目線で見た地方創生」

9月13日卓話要旨
明治大学専門職大学院ガバナンス研究科兼任講師/地域プランナー 川村 雅人 氏
(香取 純一会員紹介)

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   私は40年余り会社勤めをしましたが、元来地方が好きで、仕事を通じ全国いろいろな地域を見てきました。その中で、縁あって二十数年間付き合ってきた岡山県真庭市のNPO「21世紀の真庭塾」に現在も関わっています。このNPOは民間経済人を中心につくられ、長年の民間主導の活動成果が注目されています。その記録集作りをしたことを契機に、ここ3年ほどは月一のペースで地元に滞在しています。地方創生は自分の専門分野であり仕事にも携わってきましたが、一住民と同じ目線で見るといろいろな問題があるように感じます。
 地方創生という言葉はずっと前からあると思うかもしれませんが、わずか4年前、第2次安倍政権が東京一極集中を是正すること、人口減少に歯止めをかけること、日本全体の活力を上げることを目的に掲げた言葉です。地域活性化や地域おこし、まちづくりは普通名詞になっていますが、地方創生はまだなっていません。普通名詞になるには世の中が成果を認め、市民権を得ることが必要です。人口の地方分散、地域格差の是正は数十年来の大きな課題ですが、なかなか実現していません。ですから、地方創生は、地方にもう一度目を向けてもらうキャンペーン向けのスローガン程度だと考えればよいと思います。
 こうした地方創生の号令の下、国は全国の都道府県と市町村に「地方人口ビジョン」と「地方総合戦略」の策定を求め、地方創生関連予算として年間2兆円近くの国費を使っています。その成果はというと、地方の人口減少は止まらず、東京一極集中はさらに進んでいます。地方移住の成功策とされる「地域おこし協力隊」も地元定着面では問題があります。政府機関や企業の本社機能の地方移転も進みません。多額の交付金による「地方創生バブル」には、自治体も戸惑い気味です。徳島県神山町のような数少ない成功事例も昨日今日の成果ではなく、地方創生の成果を数年で問うのは酷です。特効薬はないと考えた方がいいでしょう。
 地方に暮し見えてきたことがあります。地方の財源不足は常態化しており、小規模市町村では自主財源が2~3割は当り前です。また、補助金の一部は返す必要があるので、一見魅力的な補助金に飛びつけば借金を増やすというジレンマに陥ります。加えて、自治体職
員がサラリーマン化し危機感や政策形成能力が不足していますし、地方にはまだ行政の「お上意識」や「無謬性」が残り、組織の変革がなかなか進みません。多くの議会も首長の追認機関のようになっています。
 真庭市では、元京都府副知事の太田昇氏が市長に就任しましたが、選挙は経験していません。市長は就任当時、真庭市が描かれた「里山資本主義」のブームを利用し、国の新たな事業メニューを次々に導入し外部人材も招聘しました。職員は市長の考えをなかなか理解できず、顔色をうかがっている状況です。でも、真庭市は地域創生の先進地域として評価されています。全国で10カ所しか採択されない「自治体SDGsモデル事業」にも選定されました。一方市民からは、「いろいろ頑張っているようだが生活が良くなったという実感はない」という声も聞かれます。市民不在の施策が進められる懸念がります。真庭市で最も力を入れている木を使い切る事業でも、当事者の民間企業に比べ事務方の行政側にリアリティが乏しいのが現状です。
 ではどうすればいいのでしょうか。一つ目に、お金だけでは計れない地域の価値の循環・継承を実現することです。先人から受け継いだ地域づくりのDNAを大切にすることが求められます。
 二つ目に、自分たちの地域の豊かさを再認識してオンリーワンの発想をもう一度持つことです。つまり、地域へのこだわりを知恵として活かすことです。
 地域に最も必要なのは人です。三つ目に、志や行動力、決断力のある当事者と時代感覚を持って目利きができる人が協働することで、山も動き出すと思います。
 しかし、資金も経済力も乏しいので、お金を出してくれる人を探す必要があります。つまり、税金以外の財源です。四つ目として、価値観の変革に注目し、地域を超えた支援を模索することが必要です。ボランティアの定着やグローバル人材の増加、クラウドファンディングやふるさと納税の活用なども重要です。これまでとは違う、新たな縁を結ぼうとする人が増えることで、可能性が広がるのではないかと考えています。
 私は真庭市勝山で築190年の古民家を修復し、滞在しています。機会があれば勝山に来ていただけると、私のお話したことを解っていただけると思います。

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