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2018年11月13日 (火)

「医薬品・薬物の乱用を考える」

10月18日卓話要旨
一般社団法人日本くすり教育研究所 代表理事 加藤 哲太 氏
(松本 正会員紹介)
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   薬物乱用の事犯は覚せい剤が一番多いのですが、最近は危険ドラッグがかなり減って、向精神薬などの医薬品が増えています。そのため、一般の人が手を染めることが多くなり、薬物乱用の恐ろしさを喚起する必要性が高まっています。
 向精神薬とは広義には脳に作用する薬で、睡眠薬や睡眠導入剤、精神安定剤が含まれます。基本的に処方箋で薬剤師が販売することになっていますが、国外からも多く入ってきます。中枢神経に作用するのですが、社会不安を背景に向精神薬に頼る者がどんどん増えていて、インターネットでも買えます。処方に従って正しく使わないと乱用になりやすい薬物で、不眠や不安、焦燥感などの副作用が表れます。ただ、事犯としてはなかなか表に出てくることがないので、こうした薬物の乱用がじわじわと広がっています。
 鎮痛薬は、乱用すると薬物乱用性頭痛になります。これが今、結構問題になっていて、特に女性に多いです。痛みの信号は脳から出ていて、閾値よりも強い信号が出たときに痛みを感じるのですが、鎮痛薬を使い続けると閾値が下がり、今まで感じなかった痛みも感じるようになります。何となく不安だから飲んだり、飲んでいるうちにやめられなくなったりすると、専門医の指導を受けない限りなかなか抜けられません。そういうふうに、身近な医薬品でも乱用になる場合があるのです。私は薬剤師ですので、薬の説明書に書いてあることを守って使用するように注意喚起しています。
 モルヒネは、ガンの痛み止めとして使われている非常にいい医薬品なのですが、医療用麻薬に分類されていて、モルヒネ依存症というものがあります。日本では、他国に比べてモルヒネの使用量が少ないのですが、面白いことに普通の人がモルヒネを使うと依存症が表れ、痛みのある人が使っても依存症になりにくいのです。人間の脳にはこういうすごい能力があるのです。ですから、特にがんなどの痛みに対しては医師の指導のもとモルヒネを使用することを勧めています。
 皆さん「スマドラ」は知っていますか。スマートドラッグといって、「頭の良くなる薬」としてネットなどで売られています。脳に作用するこうした薬物を勝手に飲むのは危険なので大きな問題になっていて、厚労省はスマートドラッグ27品目に輸入規制をかけるなどしています。
 危険ドラッグの減少に伴い、青少年の間では大麻がはやっています。ただ、問題なのは大麻の影響が見えにくく、使用に対する抵抗感が小さいことです。私もいろいろな教材を作っているのですが、大麻には依存性の他に幻覚作用があるので、その危険性をしっかり教えていかなければなりません。しかし、カナダでは10月17日、大麻使用が合法化され、米カリフォルニア州でも既に合法化されているように、海外では合法化の傾向があります。これは日本にとって困ったことです。ただ、カリフォルニアでは21歳以上しか認められていないし、カナダでは若者が入手しにくくすることが合法化の目的なので、そのことを伝えていきたいと思っています。
 脳の中には1000億個のニューロン(神経細胞)があり、記憶や感情をつかさどっています。人の感情や気分は脳内の神経伝達物質のバランスによって制御されており、そこに薬物が入ることの怖さを知ってほしいと思います。今年8月、第5次薬物乱用防止5カ年戦略が策定され、学校での薬物乱用防止教育・啓発の充実がうたわれているのですが、私は「“ダメ・ゼッタイ”だけではない薬物乱用防止教育」という副題を掲げて指導しています。薬物の危険性・違法性だけでなく、的確な判断力を付け、自己肯定感を高めることの3本柱で指導しているのです。つまり、薬物の怖さを教える以前に、イチゴを見てすぐに脳が「イチゴ」と答える働きであったり、サッカーの試合中にどれだけ脳が動いているのかを説明することで、脳の素晴らしさ、人間の素晴らしさを教えています。単純に「ダメ・ゼッタイ」だけではなく、一人一人の素晴らしさを教えることで薬物乱用を防止できると考えています。
 病気やけがのときに使用する薬と違い、薬物は今よりもいいことがあるという誘惑に駆られて使用するものです。ですから、「元気なときは薬を使うな」という指導をし、薬の正しい使い方も啓発しています。これからは医薬品についても乱用の問題がいろいろと出てくると思います。乱用防止を指導する際には皆さんそれぞれの経験を生かして指導してほしいと思います。

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