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2019年2月 5日 (火)

「ボランティアと地域(コミュニティ)力」

1月17日卓話要旨
元三菱UFJ信託銀行 副社長 鈴木 祐二 氏
(福岡 正人会員紹介)

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    私は銀行を退職後、ボランティアの企画・コーディネートをしています。ビジネスは十分にやったので、今は社会への恩返しのステージにあると考えたからです。新しいこと、実務を伴うことは努力が要りますし、少しでも早く始めないと役に立たないと思いました。現在、杉並区の公立中学校の学校運営協議会長を務めていて、土曜授業の世話やプロが部活動を指導する機会をつくる支援などをしています。児童養護施設からの進学者支援にも取り組んでいます。
 また、子ども食堂や学習支援の会をボランティアで
行っています。子どもの貧困には二つの定義があり、一つは衣食住に事欠く絶対的貧困、もう一つは相対的貧困です。相対的貧困は、1人当たり可処分所得の中間値の半分に満たない状態を指し、13.9%が該当します。子どもにとっては貧しいことよりもみんなと同じことができないことの方が気になり、それが孤立感につながるので、私はこちらの方が気になっています。
 日本のひとり親家庭の比率は10%を超え、その相対的貧困率は50%を超えます。また、母子家庭の就業率は80%を超え子どもは家でひとりぼっちになりがちです。「孤食」という言葉がありますが、「食」への対応であれば不足する栄養の提供ですから行政の責任だと思います。しかし、私は「孤」の方にウエートを置いていて、ひとりぼっちの子に対し楽しさやにぎわい、居場所をつくるお手伝いをしています。「孤」の問題はどちらかというと心の問題ですから、行政ではなくボランティアで担うのがふさわしいと思います。
 われわれは、子ども食堂を大きな寺で行っています。場所さえあれば、あとはソフトウエアがあればいいので、児童館、民生委員、高齢者施設、学校、大学生、その他の地域の人々を集めてチームを作りました。このチーム作りが大事で、多種多様な人々が集まると力が出ます。そして、この子ども食堂を、同じ場所で小学生対象の寺子屋につなげました。ボランティアの人には「教えようとしないでください」とお願いしています。「援助」や「教える」という目線では子どもたちが来なくなることもあるので、子どもの目線に合わせることはとても大事です。この寺子屋は、いろいろな世代の人が子どもたちと対等な立場で一緒にいて、ひとりぼっちではない風景をつくることがベースになっています。今は保護者も教員もみんな忙しく、責任も重いので、そこに少し緩い立場にいる第3の大人がそばにいることに意義があると思っています。
 もう一つの例は、「ゆうゆう館」という高齢者向け施設での取り組みです。「シニアシェフとキッズシェフのひるごはん」といって、地域の高齢者と小学生が一緒に料理をして食べたり、地元の中学生を対象に「Café勉」という軽食付きの学習支援を行ったりしています。
 以前から周りにいる大人達が子ども達の為に一歩踏み込むと、お互いに仲間意識が生まれるのを実感しています。ソサエティ(社会)の語源はソキウス(仲間)です。ただ住んでいるだけでは社会でもコミュニティでもありません。コミュニティとは顔の見える社会のことであり、お互いが困っていることをカバーする治癒力や活性化する力があります(=地域力)。薄らいでいく地域力を再生する為、先ず何も無い所からでもボランティアを始め、そこから地域社会を掘り起こす。それが又ボランティア活動を担う力となると云う相互循環を引き起こそうとしているのです。
 これからはボランティアの担い手に変化が生じるでしょう。作業する人は山のようにいますが、プロデューサーが足りないのです。そこにビジネス能力のある現役が入ってくることを期待しています。今は第4次産業革命によって作業から解放され、時間的・空間的選択の自由度が高まっており、現役時代は仕事が全てで定年後に趣味やボランティアをするという時代は変わりつつあります。自分がやりたいことの中で、何をビジネスとして、何をボランティアとして、何を個人の趣味として取り組むかというバランスを取って、日常活動を多面的に行うビジネスパーソンが増えるでしょう。
 ボランティアには、次世代への恩送りができる楽しさ、地域を再活性化する楽しさ、新たな良き友に出会うことなど、多くの無形の報酬があります。昨年11月にはNPO法人を設立しました。これを機に、さらに領域を広げていこうと思っています。

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