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2019年7月23日 (火)

「人生100年時代に向けて摂りたい栄養のお話~少しの工夫で賢く栄養がとれる~」

6月20日卓話要旨
東京慈恵医科大学附属病院 管理栄養士 赤石 定典 氏
(島田 隆之会員紹介)

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 最近は人生100年時代といわれ、平均寿命は男女とも80歳を超えましたが、平均寿命から健康寿命(誰の手も借りずに健康で生きられる期間)を引くと、約10年は健康でない状態で生きていくことになります。その期間を短くするには、まず寝たきりを防ぐことです。
 寝たきりを防ぐには、栄養状態を改善し、手術後は多少痛くてもすぐにリハビリを始め、退院後も外出することが大切です。風邪を引いたり、精神的に落ち込んだりして食欲が落ちると、免疫機能が落ちます。すると、また風邪を引いたり、筋肉が落ちて転倒・骨折して寝たきりになったりします。これが低栄養の負のスパイラル(低栄養症候群)です。ですから、骨折さえしていなければリハビリはすぐ始められますので、そのためには痩せ過ぎず、筋肉量を維持し、骨粗鬆症を予防するために必要な栄養を摂ることが重要です。
 しかし、いくらいいものを摂っても吸収できないと意味がありません。体に必要な栄養素の99%は小腸で吸収され、大腸では要らないものを出しています。腸を健康な状態に保つには、腸内細菌をしっかり確保することが重要です。
 腸内細菌には善玉菌と悪玉菌と日和見菌があります。善玉菌は悪玉菌の増殖を抑え、ぜん動運動を促します。悪玉菌は発がん性物質を作りますが、免疫力の向上やビタミンの合成など有益な働きもします。日和見菌は顔色をうかがって、いい方についていきます。日和見菌を悪玉菌につかせないためには善玉菌を悪玉菌より多くすればいいのです。つまり、腸内フローラのバランスを善玉菌2:日和見菌7:悪玉菌1にすることです。
 善玉菌を増やすには、納豆やキムチ、麹やみそ、ヨーグルトやチーズなど発酵食品を食べるといいでしょう。また、善玉菌の餌となる食物繊維(特に水溶性)が大切です。そこでお薦めなのが大麦(もち麦、押し麦)です。大麦に多く含まれているβ-グルカンは、正常な腸の機能維持や排便促進効果、食後の血糖値上昇の抑制、コレステロール値の低下、心疾患のリスク低減などの効果があります。
 負のスパイラルを防ぐ料理としてお薦めなのは肉豆腐です。肉豆腐には動物性タンパク質も植物性タンパク質も含まれているからです。動物性と植物性は1:1で摂るのが理想です。肉豆腐に炊き込みご飯や、卵料理、野菜料理を添えると栄養バランスが良くなります。また、鍋料理もお薦めです。鍋は具材を変えることでさまざまな栄養を摂れます。力士はちゃんこ鍋を食べますが、ご飯を最初に、または一緒に食べると体重を増やせます。一方、鍋の具材から食べて、締めにおじやを食べると痩せられます。おじやは汁の栄養も全て吸収できるので、しっかりと栄養を摂れます。
 家で調理しない人には「お酢ワーク」を提案します。酢の適量は大さじ1~2杯です。酢は血糖値上昇を抑え、血圧を下げ、内臓脂肪を減らし、疲労回復やカルシウム吸収の補助、食中毒予防などの働きがあります。料理では、小あじの南蛮漬けがお薦めです。小あじと酢を一緒に摂ることでカルシウムの吸収率を上げますし、油で揚げてあるのでカロリーもしっかり摂れます。また、鶏手羽などは酢と一緒に煮てから焼くことで、骨のカルシウムを外に出すことができるのでお薦めです。しじみのみそ汁は、しじみを煮る前にリンゴ酢を入れて貝殻のカルシウムを出すようにします。酢を摂るためにも、専用のボトルを持ち歩くといいでしょう。
 今は飽食の時代なのに、必要な栄養は摂れていません。しかし、少しの工夫で賢く栄養を摂ることができます。カルシウムは吸収率があまり良くなく、10代でも約40%、60代では約10%に落ちてしまいます。特に野菜からの吸収率が良くないので、ビタミンDや酢酸と一緒に摂るといいでしょう。コンビニ弁当などの場合は、枝豆を加えると栄養バランスが良くなります。枝豆は植物性タンパク質と緑黄色野菜のいいとこ取りなのです。家で調理するときはフライパンで蒸し焼きにするとビタミンCの損失も少なく味も良くなります。
 また、ピーマンのワタは捨てず、ゴボウも皮剥きやアク抜きをしないで食べると、栄養が無駄になりません。そうするとごみも少なくなり、調理の手間も省けます。栄養素を理解するだけで料理や食べ方が変わり、意識も変わるのです。そうして健康長寿でいることが一番の社会貢献になると考えています。

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