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2019年12月 3日 (火)

「お金の話アレコレ―キャッシュレス化は進むか?―」

10月24日卓話要旨
(株)東京きらぼしフィナンシャルグループ 代表取締役社長 

味岡 桂三 氏    (水藤 有仁会員紹介)
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 日本では年間どれくらいの現金が流通しているかというと、約110兆円です。わが国のGDPの約2割に相当します。世界有数の現金比率が高い国であることが日本の特徴です。なぜ現金志向が高いかというと、治安が良く、現金を持ち歩いても安全だからです。また、冠婚葬祭のときやお年玉は現金でなければならないという文化があること、日本銀行が現金のクリーン度を一定レベル維持しており、現金自体がクリーンで信頼があること、さらには全国に自動販売機やATMなど現金を使いやすいインフラが整備されていることが挙げられます。
 しかし、世界ではキャッシュレスが進んでいます。代表的なのはクレジットカードや交通系のプリペイドカードです。また、給与や取引で銀行インフラを使うこともキャッシュレスに含まれます。最近では、QRコードを使ったキャッシュレスサービスも進んでいます。日本政府は2027年までに、キャッシュレス決済比率を現在の2倍に引き上げる目標を掲げました。
 しかし、海外ではさらにキャッシュレスが進んでいます。例えば中国では、QRコードによるスマホ決済が進んでいます。特に内陸部では銀行支店がなかったり、銀行口座を持っていない人が多かったりして、銀行サービスに対する長年の不満がありました。その中でスマホが普及し、QRコードが発明され、それが結び付く形で普及したわけです。さらに、eコマースが顧客を取り込んだことで、一気に膨らんだことも影響しています。
 実は、キャッシュレス比率が世界で特に高いのは韓国です。韓国では特に、クレジットカードが普及しています。これは、韓国政府がクレジットカードを使った分、所得控除をするなどの政策を取ったためです。
 ケニアでもキャッシュレスが進んでいます。ケニアは中国以上に銀行の数が少なく、現金をトラックで運んでいました。同時に携帯電話が普及したことにより、電話番号を銀行口座のように使って送金するシステムを作りました。インフラが整っていないが故に、キャッシュレスが進むという見方もできるかもしれません。
 北欧諸国でもキャッシュレスが進んでいます。国土が広く、現金デリバリーのコストが大変だったため、キャッシュレスが進んだといわれています。スウェーデンでは、中央銀行がデジタルの紙幣を発行することも検討されているようです。実際に私が北欧に行ったときも、ノルウェーの有料公衆トイレやデンマークの券売機はキャッシュレスとなっていました。一方、現金が使えず、クレジットカードで処理するにも少し時間がかかって不便なところもあると感じました。
 実は、現金にもキャッシュレスにもそれぞれデメリットが存在します。現金は製造や物流、レジ締めや小銭の用意などでコストや事務負担が発生します。そして、強盗や窃盗などの犯罪リスクもあります。それから、現金は直前に誰が使っていたのかが分からないという匿名性を利用し、マネーロンダリングに使われる可能性も高くなります。そして、たんす預金もされがちであり、脱税につながる恐れもあります。
 一方、キャッシュレスにもデメリットがあります。例えば、クレジットカードは一定の信用度がないと発行されないため、アメリカなどでは現金を受け取らない店も出てきて、所得の少ない人が利用できなくなるなど、デジタルデバイド(格差)が問題となっています。また、窃盗などが起きない代わりに、コンピューターウイルスやアカウント乗っ取り、偽QRコードによる振り込め詐欺など、新たな犯罪も出てきています。そして、購入履歴情報などが分かってしまうというプライバシー問題もあります。災害などの停電でスマホのバッテリーが切れれば使えなくなりますし、キャッシュレスだと無駄遣いをしやすくなるのではないかという不安もあるでしょう。
 しかし今後、日本もキャッシュレスが進んでいくことは間違いありません。ただ、中国などのように一気に進むにはしばらく時間がかかるでしょう。なぜなら、既にさまざまなクレジットカードやプリペイドカードが普及し、スマホ決済のQRコードも統一されておらず、利用者がどこでも使える環境には至っていないからです。一方、現金を使いやすいインフラは整備されたままで、現金の信頼も高い状態です。ですから、これから協調と競争が行われながらキャッシュレスは進みつつ、現金もそこそこ残るでしょう。

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