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2022年12月13日 (火)

「ウクライナ戦争─誰が勝者になるのか」

10月14日卓話要旨
テレビ朝日報道局 コメンテーター   武隈 喜一 氏
(児玉 正孝会員紹介)

20221014

   本日はこのような機会を頂き誠にありがとうございます。せっかくの機会ですので「ウクライナ戦争、誰が勝者になるのか」という私の個人的な思い切った話をさせて頂きます。
ロシアの侵攻が始まってから毎週ロシア人の友人達と電話をしていますが、彼らも一枚岩ではなく、この戦争を巡り家庭内や友人同士で亀裂ができて、様々な思いを抱えながら日常に対処していることが伝わってきます。ロシア軍は、当初、72時間でキーウを落とし政権を転覆しようと考えており、このような大戦争になるとは思っていなかったようです。日本では2月24日に始まったと思われていますが、ウクライナにとっては2014年3月にロシアがクリミアを併合した時から始まっており、8年戦争です。いつかロシアは攻めてくると、ウクライナは軍を鍛え市民防衛にも力を入れてきました。そのため効率的な反撃ができたのだと思います。

戦場の規模感ですが、キーウと西側のリヴィウは凡そ東京-広島間の距離です。したがって、ロシアが占領している地域は福島から東海道を抜けて近畿全域。ウクライナはほぼ平地なので、この福島から岡山に至る前線700~800キロを護るのは相当大変です。
ロシアは動員令で集めた兵士に銃を持たせて立たせておくだけでも良いわけです。逆にウクライナ側にしても西側から供給された戦車や武器を列車で運ぶのは時間がかかり、大変な困難を伴うというのが実態でしょう。先日、ロシアが80数基のミサイル攻撃をしました。日本にも北朝鮮のミサイルが1~2基飛んできますが、現実問題として80基のミサイルが一斉に飛んでくるのです。安全保障、自分たちの国を守るという事を真剣に考えていかなくてはいけません。
さて本題です。果たしてプーチン政権はもつのか?TVではプーチンは焦っている、自棄でミサイルを撃っていると言われていますが、それは希望的観測で、実際には国民の支持を繋ぎ止め権力を握っていると思います。但しプーチン政権に不安定な要素がある事は確かです。政権基盤がロシア軍とKGB(現FSB)であるのはソ連以来一貫して変わりません。KGBは個人や組織の秘密に入り込み、得た情報を脅しに使いながら社会を構成していく密告と脅しの組織で、法を越えた手段さえも与えられ、特権が与えられている非常に歪んだ組織です。これまでプーチンは微妙なバランスでKGB幹部と国防省(ロシア軍)幹部に特権を与えて牛耳ってきましたが、大きな亀裂が生じています。元々ロシア軍は諸手を挙げて侵攻しようとしていたわけではなく、3日で終わるという読みがKGBから上がり、ウクライナは歓迎してくれるというので入っていったのです。その後の苦戦についてロシア軍はKGBに対して大変不満を持っています。反戦・反動員の広がりはと言えば、今は収まっていて順調に動員が進んでいます。
では、経済制裁はというと、実際には普通に貿易をしている国もあり市民生活への影響はそれほど多くありません。もちろん金融や生産部門への影響は極めて大きく、ボディブローのように効いてくると思いますが、終戦のきっかけとなるとなかなか難しいと思います。こうして見るとプーチン政権はそう簡単には崩れない。やはり注目すべきは、軍とKGBとの溝が深まり、プーチンの安定基盤が切り崩されることだと思います。他に、中間層、すなわち働き盛りの人口流出はこの2年で200万人と大きな損失になると思います。動員格差による地方の不満も極東付近では高まっています。一方、ゼレンスキーの不安と言えば、西側の支援疲れや国内経済の破綻ですが、NATOとアメリカが相次いで万全の支援を表明した所です。
では誰が勝者になるのか?私はロシアが勝つことはあり得ないと思います。孤立し巨大な北朝鮮のように成り得ても、勝つことは無い。もはや核兵器を使っても戦局を好転させることは出来ず、プーチンとその周辺幹部の命は持たないであろう報復を西側は考えています。しかしウクライナや西側諸国が勝者になるかは、ロシアの負け方次第だと思います。ロシアが負けて地方に分裂し、各地でプーチン的な独裁者が出現し核兵器を握るかもしれないことが一番危惧されており、どのようにロシアを敗北させていくかが大変難しい局面だと思います。戦争は、ロシアが占領している地域をウクライナが一歩一歩開放し取り戻していくプロセスを経ないと終わらないのではないか、故に、まだ長く続くだろうと考えています。

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